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恋する真珠
第2章 恋するカナリア
「また、発表会を観に行ってもいいかな?」
遠慮勝ちに尋ねる財前に瑠璃子は頷いた。
「はい。観に来てください。
…私、来年は受験生だから、発表会はしばらく出られないかもしれないので…」
財前が瞬きすると、ああ…と声を漏らした。
「そうか…。瑠璃子ちゃんもう高二だものね。
大学受験か…。
どこを受けるの?」
「…私、お勉強をあんまり熱心にしてないんです。
…だから財前さんみたいに国立とかは無理なので…。
ママや柊ちゃんは星南女学院大学がいいんじゃないか…て」
途端に財前の瞳が輝いた。
「星南女学院、いいじゃない。
お嬢様学校だし、横須賀にあるからまたフェリーで通えばいいしね。
…星南は妹も通っていたんだよ。
学閥がしっかりしているから有名企業のOGがたくさんいて、就職に有利だって言っていたよ。
妹は今、モルガン銀行に勤めている」
「…へえ…」
星南女学院は兄が初等部から高等部まで通っていた私学の兄弟校であり、母 由貴子が通っていた学校だ。
由貴子は若い頃は身体が弱く両親に大切にされる余り、大学卒業後は自宅で近所の子供たちにピアノを教えたりして、いわゆる一般企業への就職はしていなかったらしいが…。
「…そうなんですか…」
就職…なんて、まだ大学の進路も霧の中なのに、ピンと来ない。
「星南なら僕も妹もアドバイスしてあげられるよ。
何でも相談してほしいな」
財前が手摺りに寄りかかりながら、瑠璃子の貌を覗き込むようにして優しく笑った。
…漠然とした不安を抱えていた瑠璃子は、財前の温かな笑顔にほんのり癒された。
…良い人だな…。財前さん…。
「ありがとうございます…」
瑠璃子は少しはにかみながら笑みを返した。
…フェリーの長く尾を引く汽笛が、波の音に紛れながらのんびりと闇夜に溶け込んでいった。
遠慮勝ちに尋ねる財前に瑠璃子は頷いた。
「はい。観に来てください。
…私、来年は受験生だから、発表会はしばらく出られないかもしれないので…」
財前が瞬きすると、ああ…と声を漏らした。
「そうか…。瑠璃子ちゃんもう高二だものね。
大学受験か…。
どこを受けるの?」
「…私、お勉強をあんまり熱心にしてないんです。
…だから財前さんみたいに国立とかは無理なので…。
ママや柊ちゃんは星南女学院大学がいいんじゃないか…て」
途端に財前の瞳が輝いた。
「星南女学院、いいじゃない。
お嬢様学校だし、横須賀にあるからまたフェリーで通えばいいしね。
…星南は妹も通っていたんだよ。
学閥がしっかりしているから有名企業のOGがたくさんいて、就職に有利だって言っていたよ。
妹は今、モルガン銀行に勤めている」
「…へえ…」
星南女学院は兄が初等部から高等部まで通っていた私学の兄弟校であり、母 由貴子が通っていた学校だ。
由貴子は若い頃は身体が弱く両親に大切にされる余り、大学卒業後は自宅で近所の子供たちにピアノを教えたりして、いわゆる一般企業への就職はしていなかったらしいが…。
「…そうなんですか…」
就職…なんて、まだ大学の進路も霧の中なのに、ピンと来ない。
「星南なら僕も妹もアドバイスしてあげられるよ。
何でも相談してほしいな」
財前が手摺りに寄りかかりながら、瑠璃子の貌を覗き込むようにして優しく笑った。
…漠然とした不安を抱えていた瑠璃子は、財前の温かな笑顔にほんのり癒された。
…良い人だな…。財前さん…。
「ありがとうございます…」
瑠璃子は少しはにかみながら笑みを返した。
…フェリーの長く尾を引く汽笛が、波の音に紛れながらのんびりと闇夜に溶け込んでいった。