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恋する真珠
第2章 恋するカナリア
「…は、はい。
お付き合い…しています…」
瑠璃子はぎこちなく答えた。
「本当に?」
「…本当に…て、どういうことですか?」
疑うような財前の口調に些かひっかかりむっとした表情で尋ねる。
財前は瑠璃子の態度に慌てた様子もない。
「…なんだか、そんな風に見えなかったから…」
「え?」
「…君はとても清楚で…君からは純潔さしか感じないから。
きっとまだ涼太さんとは本当の意味で恋人同士になっていないんだろうな…て」
「…ちょっ…!
し、失礼じゃないですか!」
きっと、眦を吊り上げて怒る瑠璃子に、財前は落ち着き払いながら、距離を縮める。
「やっぱり図星だね。
瑠璃子ちゃん、十七歳になったんだよね?
それなら法的にはなんの問題もないよね?
女の子は十六歳から結婚できるんだよ。
それなのに涼太さんはまだ君を求めないなんて…覚悟が決まってないとしか、僕には思えないよ」
「…か、覚悟…?」
「…そう。君を受け止め、君の人生を受け止める覚悟だよ」
…財前のいかにも育ちの良さ気な甘く整った貌が近づく。
「涼太さんはまだ迷っているんじゃないかな。
…いや、それは涼太さんの都合じゃない。
瑠璃子ちゃんの可能性を狭めたくないと言う大人の配慮だよ。
瑠璃子ちゃんはまだ十七歳だ。
これからさまざまな可能性がある。
きらきらと輝く人生が待ち受けているに違いない。
それを…小さな海の町に閉じ込めてしまっていいんだろうか…?
…てね」
瑠璃子は思わず押し黙る。
まるで、この間の涼太の言葉を盗み聞きしていたかのような発言だったからだ。

…「お前には限りない可能性がある。
色々な人に出会って、色々な体験をして…。
お前の人生はこれからなんだ」

財前はゆっくりと、まるで優しい催眠術をかけるかのように語り始めた。
「…涼太さんは優しいひとだ。そしてとても大人だ。
涼太さんは、君が本当にあの海の町で幸せになれるのかと悩んでいるんじゃないかな。
だから、君と恋人同士になるのを躊躇しているんだよ。
…けれど、僕なら」
財前の手が、瑠璃子の華奢な手を掴んだ。
それは、決して荒々しい仕草ではなかったが、意外なほどに強い力が伝わってくる。

「僕なら、君を受け止められる。
君の人生を豊かにして、君をもっともっと美しく煌めかせて、幸せにすることができる。
…なぜなら、君を今も誰よりも替えがたいほどに愛しているから」

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