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微妙なお年頃
第4章 ・・こない
かすれる息とともに吐きだされた短い言葉をしっかりと聞き取った文子は、
驚きのあまり手にしたジョッキを揺さぶりわずかに中味をこぼした。
「ちょっと、ほんと?アンタ・・へぇ!やるじゃない!で、誰よ、相手は?
 あ、やっぱスポーツクラブで知り合った人?」
「うん・・そこのインストラクターで・・」
聞いた瞬間、文子は目と口を真ん丸に開いた。
「えっ?ってことは・・もちろん年下よね?うわぁ~・・ね、いくついくつ?カレは」
かわいく見開いていた目は突如ギラギラとしたいやらしさにまみれ、息も荒くなっている。
この後彼の年齢を聞いた時の文子の興奮度合いが手に取るようにわかる。
「20歳、下なの・・だから、えっと、32」
ちらりと上目遣いに文子に目をやると、
まるで水面で必死に息継ぎをしている金魚のようになっていた。
「20歳も!脂のってるなんてもんじゃないでしょ?逆についていかれるの?
 体力的にさぁ」
きっと、文子の頭の中では、機敏な動きの30男と動きもテンポも鈍い50女の
重なる姿が描かれているのだろう。
だから、余計に自信たっぷりに胸を張って答えた。


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