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揺れる世界の秘め事
第5章 最寄り駅、帰宅。
「ホントは電車で起こすか、そのまま持ち帰って
起きた反応見るか迷ってたんすよ?
ガマンした俺を褒めてもらいたい」
自信ありげに有馬君が笑う。
「…最低ね、あなた」
もう、と笑いながら首にまわした腕の力を強める。
「ははは、所々冗談」
「半分ですらないのね……」
「そりゃぁ、据え膳食わぬはって言うっしょ」
「…とんでもない後輩だわ…ホント」
「どんな世界でも言うもんだよなぁ…後輩である前に男だから…って」
時折真剣みを帯びた口調になるのにドキリとする。
「………ねぇ。何処からが嘘なの」
「センパイがそう思うところからでいいよ」
笑いつつも、きっと彼は笑ってないのかもしれない。
「…良くないわ…そんな冗談」
「はいはい」
軽くあしらわれ、少しだけむっとする。
首元にグリグリと頭を押し付ける。
「……重くない?」
「まぁ、人間的に言うと軽いと思いますよ。
女一人持ち上げるくらいどってことねぇっす」
「そう…」
「…………」
「………」
沈黙に耐え切れない、と、言うわけでもなく。
ただ、揺れる景色でも、
彼の匂いでも、
少し、心地いい。
「……ねぇ」
「なんすか…?」
「なにか喋って。じゃないと寝ちゃう」
「それは困った…俺の家に持ってくよ」
「寝た人を襲う趣味は無いでしょ?」
「麻美さんだったらイケる俺」
「……それは…困る…」
「はは、冗談です」
そんな話をしてからも、道案内しつつも。
ぽつりぽつりと会話を続ける。
彼の背中に揺られながら、
少しずつ安心と心地よさにうとうとしてしまう。
「気持ちいいなぁ…」
無意識の内に一言呟いて、
有馬くんの背中に頬を擦り寄らせる。
そのままふわふわと落ちていく意識。
****
背中の先輩が小さな子供みたいな甘えた行動をしたかと思うと
背中が重くなった気がする。
「……センパイ?」
小さな声で話しかけるが返事がなく、
くぅ…くぅ…と可愛い寝息が聞こえる。
「……寝てるし……はぁ…誘ってんだか…」
苦笑を浮かべながら先ほど聞いていた彼女のマンションへ向かう。
******
起きた反応見るか迷ってたんすよ?
ガマンした俺を褒めてもらいたい」
自信ありげに有馬君が笑う。
「…最低ね、あなた」
もう、と笑いながら首にまわした腕の力を強める。
「ははは、所々冗談」
「半分ですらないのね……」
「そりゃぁ、据え膳食わぬはって言うっしょ」
「…とんでもない後輩だわ…ホント」
「どんな世界でも言うもんだよなぁ…後輩である前に男だから…って」
時折真剣みを帯びた口調になるのにドキリとする。
「………ねぇ。何処からが嘘なの」
「センパイがそう思うところからでいいよ」
笑いつつも、きっと彼は笑ってないのかもしれない。
「…良くないわ…そんな冗談」
「はいはい」
軽くあしらわれ、少しだけむっとする。
首元にグリグリと頭を押し付ける。
「……重くない?」
「まぁ、人間的に言うと軽いと思いますよ。
女一人持ち上げるくらいどってことねぇっす」
「そう…」
「…………」
「………」
沈黙に耐え切れない、と、言うわけでもなく。
ただ、揺れる景色でも、
彼の匂いでも、
少し、心地いい。
「……ねぇ」
「なんすか…?」
「なにか喋って。じゃないと寝ちゃう」
「それは困った…俺の家に持ってくよ」
「寝た人を襲う趣味は無いでしょ?」
「麻美さんだったらイケる俺」
「……それは…困る…」
「はは、冗談です」
そんな話をしてからも、道案内しつつも。
ぽつりぽつりと会話を続ける。
彼の背中に揺られながら、
少しずつ安心と心地よさにうとうとしてしまう。
「気持ちいいなぁ…」
無意識の内に一言呟いて、
有馬くんの背中に頬を擦り寄らせる。
そのままふわふわと落ちていく意識。
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背中の先輩が小さな子供みたいな甘えた行動をしたかと思うと
背中が重くなった気がする。
「……センパイ?」
小さな声で話しかけるが返事がなく、
くぅ…くぅ…と可愛い寝息が聞こえる。
「……寝てるし……はぁ…誘ってんだか…」
苦笑を浮かべながら先ほど聞いていた彼女のマンションへ向かう。
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