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揺れる世界の秘め事
第3章 気だるい肢体~オフィスにて~
遅れを取り返すために残業をして、
気が付けば時刻は21時を越えていた。

「…まだできるけど…んん…そろそろ帰ろっかなぁ…」
そう思い会社のビルから出ると…
「…あれ…君…?」
「…あ、やっときた…」
ビルの入り口の近くでしゃがんでるのは有馬君だ。

「…どうしたの?少し前に帰ってたよね?」
不思議そうに首をかしげて尋ねると
有馬君はぎくりと目を泳がせる。

「あー…まぁ、先輩今日なんか変だったから…俺と最寄り駅近いっぽいし一緒にどうかなって」
そう言うと私の手のひらに缶コーヒーを手渡し、数歩駅へ向かい歩き出す。

ちらほらと自販機に暖かい飲み物が増えた秋口に、渡された缶コーヒーは少しぬるくなっていて、
それだけの時間待っていてくれたと邪推してしまう。

イイ後輩に出会えたなぁ…なんてしみじみ感じる。

「ありがと、あ、これ私の好きなやつだ」
「へぇー、じゃあ当たり」

にかっと明るい笑顔をされ、心がなごむ。

「じゃあ、一緒に行きましょ、というか有馬君と私って最寄り近いの?」
「ん、たぶん。時折オフの日に見かけたり電車内でも見かけたことありますよ?」
「ええ?そうなの??声かけてくれれば良いのに」
「いやぁー…迷惑じゃないすか?」
「全然?君と違ってモテないからねぇ?」

くすりと嫌味半分で笑うと不思議そうに首を傾げられる。

「ええ?先輩綺麗だし人気っすよ?
ただまぁ…近寄りがたい感じはあるけど」
「そうかな…」
会社で1、2を争うであろう男性からそんな答えが返ってくると思っていなくて、少し嬉しい。

「そうですよ」

目を瞑り有馬君がツカツカと進みだす。

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