この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
揺れる世界の秘め事
第4章 帰宅ラッシュ
有馬君の後ろを歩きながら話していると
歩幅を緩め横に並ばれる。
その流れるような気遣いが
あまりにもスムーズで感心する。
やっぱり経験豊富で手馴れているんだろうか。
「しっかしあの路線痴漢多いらしいから
危ないんすよねぇ」
ふと思い出したかのように有馬君が言った言葉にぎくりと反応する。
「そ…そう…なんだ」
「らしいですよー?俺は見たことないですが…先輩も気を付けて下さいね~」
「う、うん…」
「あぁ、そういえば~」
すぐに話が変わった事に少しホッとする。
痴漢…今朝私に触れた男は夜に、と言っていたけれど…
本当に私を狙って来るのか…?
急に寒気がしてぶるりと震えると、
すぐ隣の後輩から風邪かと心配され大丈夫と笑みを返す。
有馬君はまだ納得していないみたいな表情をしたけれど、気を紛らすように彼との会話に花を咲かせる。
「ん、駅つきましたね。
この時間だと結構混むかもですねー」
「ん~…あまり満員電車は好きじゃないなぁ、私」
「俺も嫌い…と言うか好きな人とか居ないと思いますよ」
くすっと笑いながら言う彼に頷く。
「それもそうね、あ、電車来たわ」
遅い時間なせいもあって結構な混み具合の電車の中に有馬君と入る。
2、3駅すると人に押されてしまい、気が付けば有馬君とは離れてしまったようだ。