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昼想夜夢~君、想ふ~
第6章 指先
彩花が来る前にポケットに忍ばせておいたカッターナイフ。
それを彩花の目の前に持って来てカチカチと刃を出して見せた。
現場などでよく使う大型カッターナイフ。

彩花の瞳がカッターの刃を見た瞬間、彩花の表情が凍りつく。

「あ、あ…っ」

怖くて声も出せない様子。
大の男に押し倒されて、目の前には刃物。
防音の効いた部屋で叫んでも喚いても隣人には聞こえない。
いや、この状況では声も出せないか…。
俺の体の下でガタガタと震えている。

「どうした?急に大人しくなったな…」
「……っ」



俺は、どこまで彩花を追い詰めれば気が済むんだ?
本当は誰よりも大事にしたいのに。
誰よりも大事な妹だったはずなのに。

俺以外の名前を呼ぶ彩花が憎くて、大嫌いで…
俺の前で泣きそうな表情を見せる彩花が堪らなく腹立たしくて…。

こんな事がしたいんじゃないと、俺の中の冷静な人格が叫んでるのに
止まらない。


止 ま ら な い ――――――――。






俺はカッターナイフを持った手を大きく振りかざした

そして、一気に…




「――――――っ!!」











ザクッ…











声にならない悲鳴と、この世の終わりかのような表情を見せた彩花。
刺されると思ったのか、カッターを振り下ろした瞬間、彩花は固く目を閉じた。

そして、カッターナイフの切先の先は…。






「あ…っ。はぁ、はぁ、はぁ…」


彩花の荒い息遣い。
恐らく、俺と彩花の心拍数は一気に上昇したに違いないな。
耳をすませば、今にもお互いの心臓の音が聞こえて来そうなほどだ。

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