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昼想夜夢~君、想ふ~
第6章 指先


「彩花…」
「な…っ」




彩花の頬に指を這わせた。
怯えられて当然だが、彩花に触れていたかった。
本当は傷つけずに、もっと優しく触れていたいのに。




「ちょっ…、な…」

さっきまでカッターナイフを振りかざし、今にも刺して来そうだったのに
急に大人しくなった俺を見て彩花は不思議そうな表情をしている。

だが、俺の憂いを彩花がそのまま信じるはずがない。
これもまた何かの罠かと疑いの眼差しが垣間見れる。

「あの、純お兄ちゃ―――――…」







と、その時だ。
ベッドの下から聞こえて来た電子的な音のメロディー。






~♪♪、♪





そのメロディーは、俺のスマホの着信メロディー。
誰だ、こんな時間に…?

床を見ると、そこには先程彩花が落としたであろうスマホがあり、画面が煌々と光っている。
誰かからの着信が来てることはわかる。

股がっている彩花の体から少し離れ、床に落ちているスマホを拾うと、画面に表示されていたのは…




『北条 雅志』




そこに表示されていた名前は北条の名前だった。




「あー、北条からだ…」

意地悪にそう呟くと、さっきの安堵の表情が一転。
彩花の表情が一瞬で凍てついたのがわかった。

「ま、まー君…?」

北条がこんな時間に電話をかけてくると言うことは、残業で何かトラブルでもあったのだろうか?
それとも、何か別の用事か?

凍てつく彩花の表情…。
もっと、もっと曇らせてしまいたい。
北条じゃなく、俺のことだけを考えられるように…。

「もしかして、何かトラブルでもあったのかもなぁ」
「え…?」

もし、本当にトラブルがあったなら、北条の先輩である俺が着信を無視するわけにもいかないが。

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