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昼想夜夢~君、想ふ~
第8章 禁区
「……帰る!」

彩花はリビングに置きっぱなしだった鞄を持ちリビングを出ていこうとしていた。
どうやら俺は相当嫌われてしまったらしい。
髪が濡れていても、そんなものはお構い無しに出ていこうとしている。

「おい、その格好でか?」
「………っ!」

髪は濡れてるし、上はカッターシャツに下はグレーのスウェットズボン。
明らかにおかしなコーディネート。
そんな事すらどうでもいいように俺の言葉を彩花はさっさと玄関に向かった。

彩花の後を追いかけて玄関に向かうと、彩花はちょうど靴を履いてる最中。
俺に背中を向けたまま急いで靴を履こうとしてるが、慌ててるせいで足元がもたつく。

「おい」
「ほ、ほっといて!これ以上あんたなんかと一緒にいたくないっ!」

…なるほどね。
濡れた髪も、今の服装も気にならないくらい俺の事が嫌いらしいな。
無理もない。

それだけ俺は彩花に酷いことをしたのだから。

靴を履き終えた彩花が歩き出そうとした時だ。





―――――バサッ。






「……え?」








季節はもう初冬だ。
風呂上がりに濡れた髪、カッターシャツ一枚では風邪を引いてしまう。
彩花の背後の肩に分厚いダウンを掛けた。

「ちょっと…」

不思議そうな目でこちらを振り返る。

「もう使ってねぇダウンだ。服もズボンもダウンも、全部捨てていい」
「………っ」





…何やってんだ、俺。
大嫌いな女なら、風邪をひこうがどうなろうが知った事ではない。
だが、もし風邪をひいて苦しむ事になったら…、そう思うとこのまま帰す事が出来なかった。

引き止めても、どうせ彩花は帰ってしまう。

ならせめて、少しでも暖かくしてやろうと思った。
こうなったのは俺のせいなんだから。

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