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昼想夜夢~君、想ふ~
第9章 臨界点
「はぁ…」

俺はため息を付きながらも必死に仕事に集中した。
仕事に打ち込む…、とは言っても忙しいのは事実だ。
このまま行けば残業続きの日々が始まるだろうし、休日出勤も始まる。

彩花を忘れるにはちょうどいいと思った。

気を引き締めてデスクに向かい資料を仕上げる。
うちの新商品のアルコールを宣伝する資料を仕上げないといけない。




――――――っ。





今だけは部署の中はバタバタと忙しい。
引っ切り無しにかかってくる電話、人が慌てる声。
集中したいのに出来なくてこちらまでイライラして来る。
まぁ、部署内がバタバタするのは仕方ないが。

そんな中で、俺の背後から聞こえてきた声。



――――「いや、だから…。それは…」




背後から聞こえてきたばつの悪そうな声。
それは…、北条の声。



俺はその声を背中で聞きながら妙な違和感を感じた。



あれ、北条のやつ、誰と喋ってんだ?
北条の口調的に取引先とかではなさそうだな。

「ちょっと落ち着けって…っ。仕方ねぇだろ…」

その口調は、ビジネスマンのそれとは違った口調だった。
まるで友人とでも話してるかのような口調。
この忙しい時に友人と電話かよ…、そう思いながらPCのキーボードを叩いていたが…

俺の心臓は正直に跳ね出した。








電話の相手は…、彩花…?










ドクン、ドクン、と心臓の鼓動が早まる。



「違うって、そんなんじゃねぇって…」





盗み聞きするつもりはなかった。
ただ、北条の席が後ろにあるからで…
声を潜めてるつもりだろうが、周りが煩くて、北条の声も無意識に大きくなっていて…

自分に言い訳をしながらも、キーボードを叩く手が止まってしまった。

北条の声が気になって…。



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