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昼想夜夢~君、想ふ~
第9章 臨界点
「ところで小川さん、午後の外回りなんですけど、どこのエリアから――――」



握り締めた拳の中で、爪が手のひらの皮膚に食い込んだ。
北条をぶん殴りたい気持ちを必死になって押さえ込んだ。
ここで北条を殴ったら、全てが終わる。

封印したい気持ちと、ぶん殴りたい怒りが混ざり合って今にも吐きそうだ。



「小川さん?」
「……彩花の気持ちも考えてやれよ…っ」
「えっ?」




頭が痛い…。
これは、忙しさのイライラだけじゃない…。
堪えきれない怒りから思わず溢れたその言葉。



「小川さん?何スか?」



いや、でも
照れ隠しでわざときつい冗談を言ってる可能性だっめ残ってる。

だが、彩花の気持ちを一切考えてないかのような物言いが許せなかった。
これ以上ここにいたら、本気で北条をぶん殴ってしまいそうだ。




「……今回、俺とお前は担当エリアが別だ。他の先輩に聞け」
「え?あ、ちょっと…」







俺は踵を返し北条に背中を向けた。
いつもなら、こんな事でここまでイライラなんてしないのに、相手が北条だから…

彩花だから…っ!










「(あれ?小川さん、下の階のトイレに行くって言ってなかったっけ?それに、彩花ちゃんじゃなくて彩花って呼び捨てにしてた?)」











あれが北条の本性なのか?
いつも俺に見せていたあのウザいキャラは作り物で
さっきのが北条の本性?

もしそうだとしたら、俺は本気で…。

「くそ…っ!」




俺はデスクに戻ると、前髪をかきあげながら仕事に集中しようとしたが、さっき以上に考えがまとまらない。
宣伝文句を考えなきゃいけねぇって言うのに、何の言葉も思い付かない。
頭を捻ってアイデアを絞り出そうとするが、出てくるのは彩花の事ばかりだ。


あいつは、本当にバカだ。
あれが北条の本性だとしたら、それに気づかずに付き合ってたのか?
だとしたら、見る目なさすぎだろう…。

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