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昼想夜夢~君、想ふ~
第9章 臨界点
俺は彩花の気持ちを考えると胸が痛んだ。
大好きな恋人にドタキャンをされ、せっかくの誕生日を蔑ろにされた彩花の気持ちを考えると…。

「――――…」

さっきまで順調に打ち込めていたキーボードのキー。
もう、手を動かす気力さえなくなっていた。


きっと彩花は、俺との出来事を忘れたいんだろう。
だから、誕生日は北条と過ごしたかったのだろう。
その日だけは、北条に目一杯愛されたかったんだろう。
なのに、何も知らない北条は…。

「――――…っ!」









今は繁忙期で、会社は猫の手も借りたいぐらいに忙しい。
残業や休日出勤も当たり前の時期。
それはわかってる。
俺は北条より先輩で、北条よりも長くこの会社にいるのだから、そんな事はとっくに知っている。















「………っ」

自分でも、バカな事をしてると思ってる。
忙しさにやられて精神でも病んでしまったか?

今日は11月1日。
月始めは各所から依頼が殺到しだして忙しい。
繁忙期も重なれば残業になるのは必須。
部署内では先輩になる俺が先に帰るなんて後輩や部下に示しが付かない。

それでなくとも、今日は北条との一件でかなり時間をロスしてしまった。
これは先に帰れる空気ではない。

残業を終える頃には時刻は10時を回っていた。
皆がクタクタになって帰路に付く中、俺が向かったのは自宅とは逆方向の繁華街。




飲み屋の近くというのは、遅くまで開いてる花屋も多いからだ。






――――ピンポーン。








繁華街で寄り道をしたのが功を奏したようで、時刻は11時30分。
よかった、間に合いそうだ。



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