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昼想夜夢~君、想ふ~
第9章 臨界点
『な…っ!』

本当はこんな事が言いたいんじゃない。
本当は、もっと大事にしてやりたいと、いつも思っているのに。

でも、こうでもしないと、俺は彩花のそばにはいられない。
俺と彩花を繋いでるのは、脅迫と恐怖と憎しみ。

「それが嫌ならさっさとドアを開けろ」
『………っ!』





彩花からすれば、こんな大事なタイミングに俺なんかと会いたくはないだろう。
ただ、これは俺の独りよがりだ。
俺の独りよがりと、少しの自責の念と自己満足。
こんな事で俺のし出かしたことが許されるとは思っていないが。

ま、初っ端から脅してしまってるがな。






カチャッと、施錠が解放される音がした。
目の前のドアがゆっくりと開く。


そして…。



「今日は、一体何の――――――」















少しだけ開いたドアの隙間から彩花が顔を出した。
うんざりしたような表情で、俺の訪問を迷惑がるかのように。

そんな灰色の気分を見せる彩花の気持ちを、少しでも彩ろうとしたのだろうか。

彩花の目の前に差し出したのは――――。








「……な、何、これ…?」
「………っ」








彩花の目の前が真っ赤に染まった。

会社帰りに急いで立ち寄った繁華街の中にある花屋。
そこであるだけの真っ赤な薔薇を包んで貰ったのだ。

閉店間際で売れ残りというだけあって本数も咲き方も、そこまで豪華な代物とは言えないが。


「は?…あの」


彩花が不思議そうな顔で俺と薔薇を交互に見つめている。
いきなり目の前に、しかも大嫌いな俺から薔薇を差し出されて、意味がわからないと言った表情だ。
この表情からして、俺が彩花の誕生日を祝いに来たなんて夢にも思ってないんだろうな。

つーか、薔薇の花束なんて、渡すこっちも恥ずかしいもんだ。



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