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昼想夜夢~君、想ふ~
第10章 乱反射
この台詞を言えば、彩花は俺の元からいなくなってしまう。
決定的なこの台詞を言えば、彩花は…。
元々、彩花は北条の彼女で
俺がムリヤリ彩花を奪い無理強いさせていただけに過ぎないのだから。
俺の気持ちを告げたら彩花と俺は…。
「お、俺は…」
言ってはいけないとわかっているのに、頭の中が沸騰して思考回路が停止。
何も考えられなくなる。
言ってはいけない一言を言ってしまいそうになる。
「俺は?何…?」
彩花は不審そうな目で俺を見つめているが、頼むからそんな目で俺を見ないでくれ…。
その目で見られたら全てを暴かれた気分になる。
呼吸をするのがやっとな程に息苦しい。
抑えなきゃいけないとわかってるのに
わかってるのに…っ!
「俺を、お、お前が…――――」
息が詰まりそうな瞬間、俺の暴走を止めてくれたのは…。
――――ピンポーン…。
彩花の部屋に鳴り響いたチャイムの音だった。
「……っ?」
「あ…」
その音に、俺はハッと我に返った。
あ…、俺は今、何を言おうとしたんだ…?
つーか、何をしようとしてたんだ…?
「ごめん、誰か来たみたい…」
「え?あぁ…」
彩花はその場から立ち上がり、訪問者を確認する為に部屋に備え付けられたインターホンを手に取っていた。
「はい。どちら様ですか?」
一方で、俺の心臓はバクバクと激しく脈打っていた。
何考えてるんだよ俺は…。
自分の気持ちなんてとっくに封印したはずだろ?
なのに、俺は今、彩花に何を言おうとしたんだ?
自分がやろうとしていたことにゾッとした。
自分を取り巻く全てを一瞬忘れ、彩花に想いを告げようとしていた自分が怖くなった。