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昼想夜夢~君、想ふ~
第10章 乱反射
これ以上、彩花を困らせてどうすんだ。
これ以上、彩花を混乱させたくない…。



しかし、自分の行動に恐怖している最中、俺の耳に入って来た言葉は






「まー君…」






――――――ドクンッ…。







それは、彩花の声だった。
北条の名前を呼ぶ彩花の声。

「な、何で…?」

インターホンを耳に当てながら驚く彩花の声だった。

まー君って事は、北条?
今、彩花の部屋のチャイムを鳴らしたのは北条だ。
北条が彩花の部屋に来たのだ。

彩花は慌てた様子で俺の方を振り向いた。


よく考えて見たら、こんな真夜中に女性の部屋のチャイムが鳴るなんて可笑しな話だ。
こんな時間に女性の部屋を訪ねる訪問者は大体身内か彼氏だ。
つーか、北条のやつ…、あんな事を言っときながら何しに来たんだよ…。

はたから見ればこれは相当ヤバい状況だな。
彼氏がいない間に彼女の部屋に別の男が上がり込んでる。
しかもそれは、彼氏の上司の男なんだから。
もしこの現場を北条が目の当たりしたらどんな顔をするんだろうか?

「ど、どうしたの、いきなり…」

北条の声は聞こえないが、彩花の声は震えてる。
動揺してるのがよくわかる。
この状況では、どんな言い訳も通用しなさそうだな。
彩花の誕生日に、薔薇の花束持参で部屋に上がり込んでる。
下心はなかったなんて、信じて貰えるはずがない。

さぁ、彩花はこの状況をどう切り抜けるか…?


彩花と違い俺は至って冷静だった。
北条にバレて誤解されて…、そうなれば彩花は完全に俺のものになると馬鹿な事を考えてしまった。




「え?あ…っ」

インターホンを握りながら、彩花は俯きながら戸惑っている様子。
せっかく来てくれた彼氏を中へ入れないのは不自然過ぎるだろう。
かと言って、今部屋に北条を入れたら俺と鉢合わせてしまう。

完全に万事休すだな。


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