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昼想夜夢~君、想ふ~
第2章 記憶
「あのね、お兄ちゃんの家すぐそこなんだけど、よかったら雨が止むまでお兄ちゃんの家に来ない?」
「え、でも…」

不安そうな顔をするサヤカ。
それもそうか。
この子がいくつかは知らないが、知らない男性に付いて行っちゃダメだって学校で教えられてるだろうしな。
でも、このままじゃ…。

「お母さんはお家にいるの?」
「う、うぅん。おしごとにいってる…」

どうやらこの子の母親は仕事に行ってるようだ。
所謂シングルマザーってやつか?
でも、こんな大雨の中にこの子を置いていけねぇよ。

「じゃあ、お母さんのお仕事が終わるまでお兄ちゃんのお家にいればいいよ。お母さんの仕事が終わる時間になったらお兄ちゃんが送ってあげるから」
「あ…」
「一緒にお菓子でも食べよ」

最初は戸惑っていたサヤカだが、お菓子という言葉にパァッと顔を輝かせた。
それが、俺が見たサヤカの、初めての子供らしい笑顔だった。

「君のお名前は?お兄ちゃんの名前は純也って言うんだ」
「えっと…、こうだ さやかです。6さいです」

少し照れた表情で俺に自己紹介をしてくれた。
この時、俺は大学なんてどうでもいいと思ってしまった。
今はただ、この小さな女の子を何としても守らないとと思っていた。


香田彩花…。
これが俺と彩花の出会いだった。







「―――と、言う訳だ。北条、お前が思ってるような疚しい関係じゃねぇよ」

俺は居酒屋で、俺と彼女の関係を怪しむ北条に、事の次第を伝えた。

「なーんだ、そうだったんスかっ!あー、マジでビビった」
「びっくりさせちゃってごめんね、まー君」

まー君って…。
北条のやつ、まー君なんて呼ばれてんのか…。

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