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昼想夜夢~君、想ふ~
第12章 雷鳴
「早いな。約束の時間は9時のはずだろ?」

仕事帰りなのか、彩花は制服のようなスーツ姿で俺の前に現れた。
いつもラフな私服しか見たことがないからか彩花のスーツ姿が新鮮に思えた。

「場所がわからなかったし、遅れたら何されるかわかんないから早めに会社を出ただけよ…」
「なるほどな」

俺と視線を合わせないまま、俺の目の前の席に腰を下ろした。
視線こそ合わせてはくれないが、どこか不安げなその表情。
今朝の俺の怒鳴り声でも思い出しているのだろうか…。

「そっちこそ…、今日は、残業じゃないの…?今、忙しいんでしょ?」

あぁ、確かに今は繁忙期でほとんどの社員が終電間際まで残業してる。
ちなみに、今頃は北条も残業中だ。

「自分の仕事はさっさと終わらせて来た。効率よく仕事すれば、残業なんていくらでも回避出来るんだよ」

ま、だいぶ無理をして片付けなきゃならなかったけどな。
とりあえず、明日の仕事には支障が出ない程度には片付けて来たがな。
今日だけは、他の連中や後輩を助けてる余裕なんてなかった。
いつもなら、残業してる奴等を横目に会社を出るのは気が引けてたが。

「お前こそ、ちゃんと予定は空けれたのか?」
「…まぁ」

それも、本音を言えば俺のためじゃないことぐらいわかってる。
断れば、あの動画を拡散されてしまうからだ。
その恐怖が彩花をここへ向かわせたのだ。

「で、何の用なの?」

不機嫌そうに彩花が呟く。
俺の目の前に座ったはいいが、コートも脱がず、用意しておいた水にも手を付けていない。

「ま、その前に、水でも飲めよ」
「は?」

彩花の目の前には、氷が溶けかけた水が置いてある。

"もしかしたら、すぐに連れが来ると思うんで…"そう言って用意して貰った水だ。


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