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第12章 雷鳴

意味がなくてもいい。
ムリヤリでもいい。
その瞳に俺を映して、その甘い声で俺の名前を呼んで…

この世で一番無駄な嘘をついてくれ。
そしたら俺は



惨めな幸せを噛み締めるから。












―――――「嫌…」

「―――――っ」



彩花の口から出てきた言葉は、俺を地獄に叩き落とすかのような言葉だった。

はは…
まぁ、無理もない。
こんな酷い事をするような男に"好き"なんて、口が裂けても言えねぇだろう。

言いたくないだろうな。

彩花に拒絶されたくせに、俺はホッとしてしまっている。
惨めな想いをしなくて済んだとホッとしている。
自分から要求したくせに、何でこんなにホッとしてるんだか。


「残酷な女だな…」


無様に思い知らせてもくれねぇのか。
惨めな思いでもすれば、こんな不毛な行為もさっさと終わらせられるのに。

その一言があれば、俺は一生幸せでいられるのに。


「だ、だって…、嘘だって思うんでしょ…？」
「え…？」


絶え絶えになった息で必死に話す彩花。

嘘…？
嘘って何だ？
何で彩花が、そんな事を…。


「さっき言った…。"嘘でもいいから"って」
「あ、あぁ…」
「嘘なんか…、あっ、付きたくない…」


はっ、なるほどね。
嘘でも俺に好きと言うのは嫌って事か。
わかってたことだ。

でも、彩花はそういう女だ。
辛さを我慢するのは慣れてるのだろうが、自分の好きなものだけは絶対ぶれない。
そういう女だ。

さっきより、少し気分が楽になった。

きっと俺は、彩花に拒絶されたことより
嘘の言葉を聞かされる方が凹んでいただろうから。