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昼想夜夢~君、想ふ~
第13章 再来
日曜日…。
日曜日の記憶なんか思い出したくない。
昨日は恐らく、北条が彩花にプロポーズしてる日だ。
「――――…」
考えたくない、思い出したくない。
きっと彩花はオッケーしたはずだ。
あんなに暖かな家庭に憧れていたのだから、北条からのプロポーズなら喜んで受けたはずだ。
「はぁ…」
思い足取りで寝室を抜けてリビングに向かうと、そこに広がっていた風景
「何だよ、これ…」
鼻をつくような酒の匂いが充満していた。
机の上や床にはビールの空き缶やウイスキーの空き瓶がそこらここらに転がっていた。
あー…、昨日は自棄酒してたようだな。
どうりで頭が痛いはずだ。
出社前に片付けねぇとな。
今日、出社したらきっと北条が幸せ顔で俺に話しかけて来るんだろう。
幸せそうな顔をした北条が目に浮かぶ。
そして、俺は何食わぬ顔でその話を聞くんだ。
何もなかったかのように。
張り裂けそうな胸の痛みを我慢しながら、幸せそうな北条の話を聞かされる。
結婚した後も、毎日のようにその話を聞かされるんだろう。
それは、俺にとって地獄の始まり。
そして、今日はその始まりの日だ。
最初の日だ…。
――――シャッ…。
部屋にこもった酒の匂い。
換気も兼ねて、リビングのカーテンと窓を開け放った。
元に戻らないといけない。
俺と彩花、そして北条。
彩花はもう、北条と結婚するんだ。
そして、俺は北条の先輩だ。
もう、何もなかった日常に戻るんだ。
俺の毎日から彩花がいなくなった。
ただ、それだけの事だ。