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昼想夜夢~君、想ふ~
第13章 再来
朝、洗面台で顔を洗い、歯を磨き、髭を剃る。
いつものスーツ、いつものコートを着て、いつもの時間に家を出る。
いつもの時間、電車に乗り、揉みくちゃにされながら会社に着き、いつもと同じ業務をこなす。
そう、何も変わらない日常。
こうやって、少しずつ彩花の事を忘れて行くんだ。
大丈夫…。
幼い彩花が俺の前からいなくなった時同様に、気づけば彩花の事なんて忘れてる。
忙しさに身を任せてれば、きっとあの時と同じように忘れてる。
この張り裂けそうな胸の痛みも、きっと忘れられる。
忘れられるはずだ…。
出社して早々、俺は足早に屋上に向かった。
始業のベルが鳴る前にここで一服するのが俺の日課になってしまった。
繁忙期ともなれば休憩時間返上で業務に追われる。
何も気にせず一服出来るのはこの時間しかないのだ。
「ふぅー…」
苦い…。
口の中に広がるヤニの味。
いつもは一服して落ちつける味なのに、今日は何故か美味しくない。
我ながら、ここまで撃沈してる自分に驚いている。
昨日の記憶がすっぽり抜け落ちるほどに飲み、一服するはずの煙草の味さえわからなくなってる。
それほどに彩花との別れは俺に大打撃を与えている。
今まで、恋愛なんて面倒だと思っていた俺が。
「ふぅー…」
美味しいと感じない煙草を吸いながらも、朝の空気を全身で感じていた。
冷たい風が俺の体を冷やしていく。
ただ、俺がここに来たのは一服をするためだけではない。
一服はついでで、本当の理由は――――。
――――ガチャ。
「あ、おはようございます」
「……あぁ。おはよう」
俺の背後のドアが開いた。
やって来たのは、北条だ。
いつものスーツ、いつものコートを着て、いつもの時間に家を出る。
いつもの時間、電車に乗り、揉みくちゃにされながら会社に着き、いつもと同じ業務をこなす。
そう、何も変わらない日常。
こうやって、少しずつ彩花の事を忘れて行くんだ。
大丈夫…。
幼い彩花が俺の前からいなくなった時同様に、気づけば彩花の事なんて忘れてる。
忙しさに身を任せてれば、きっとあの時と同じように忘れてる。
この張り裂けそうな胸の痛みも、きっと忘れられる。
忘れられるはずだ…。
出社して早々、俺は足早に屋上に向かった。
始業のベルが鳴る前にここで一服するのが俺の日課になってしまった。
繁忙期ともなれば休憩時間返上で業務に追われる。
何も気にせず一服出来るのはこの時間しかないのだ。
「ふぅー…」
苦い…。
口の中に広がるヤニの味。
いつもは一服して落ちつける味なのに、今日は何故か美味しくない。
我ながら、ここまで撃沈してる自分に驚いている。
昨日の記憶がすっぽり抜け落ちるほどに飲み、一服するはずの煙草の味さえわからなくなってる。
それほどに彩花との別れは俺に大打撃を与えている。
今まで、恋愛なんて面倒だと思っていた俺が。
「ふぅー…」
美味しいと感じない煙草を吸いながらも、朝の空気を全身で感じていた。
冷たい風が俺の体を冷やしていく。
ただ、俺がここに来たのは一服をするためだけではない。
一服はついでで、本当の理由は――――。
――――ガチャ。
「あ、おはようございます」
「……あぁ。おはよう」
俺の背後のドアが開いた。
やって来たのは、北条だ。