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昼想夜夢~君、想ふ~
第13章 再来
「今日も冷えますね」
「あぁ、そうだな」
柔らかく笑った北条。
胸ポケットに入れてある電子煙草を片手にこちらに近づいて来た。
今一番会いたくなくて、今一番会わなきゃならない人物だ。
北条と彩花がどうなったかなんて聞きたくない。
二人の幸せな話なんて聞きたくない。
本当は今すぐこの場から立ち去りたい。
が、ここで逃げても同じことだ。
北条と彩花はいずれ夫婦になる。
そうなれば、いつかは嫌でも現実を目の当たりにする日が来る。
だったら、今すぐこの場で俺を殺して欲しい。
北条と彩花の幸せな話を聞かせてくれ。
二度と彩花を思い出さないように撃ち殺してくれ。
「空気も乾燥してますしねー…」
「女みたいな事言うなよ」
俺の隣に立ち、俺と同じように見慣れた街並みをぼんやりと眺めている。
「で?昨日はどうだった?」
「昨日、ですか?」
心臓が高鳴る。
脈拍は乱れてるのに、体も心も凍ったように冷たく感じる。
本当なら、今すぐ耳を塞ぎたい。
「彩花ちゃんにプ、プロポーズするとか言ってただろ?や、夜景の見えるレストランで…」
「あぁ、はい…」
声が上擦る。
これじゃまるで不審者だ。
冷静にならなければと思えば思うほど体が震える。
「オッケー、もらえたのか…?」
聞きたくない…、でも、聞きたい…。
いや、聞かなければいけない。
俺のこの気持ちがぶり返さないように。
もう、ぶり返さないように打ちのめしてくれ。
「彩花は―――――」
もうすぐ始業ベルが鳴る。
業務が始まる。
なのに俺は、一人トイレに籠りながらスマホを睨み付けていた。
業務開始直前のこの時間なら誰かに見られる事も聞かれる事もない。
「あぁ、そうだな」
柔らかく笑った北条。
胸ポケットに入れてある電子煙草を片手にこちらに近づいて来た。
今一番会いたくなくて、今一番会わなきゃならない人物だ。
北条と彩花がどうなったかなんて聞きたくない。
二人の幸せな話なんて聞きたくない。
本当は今すぐこの場から立ち去りたい。
が、ここで逃げても同じことだ。
北条と彩花はいずれ夫婦になる。
そうなれば、いつかは嫌でも現実を目の当たりにする日が来る。
だったら、今すぐこの場で俺を殺して欲しい。
北条と彩花の幸せな話を聞かせてくれ。
二度と彩花を思い出さないように撃ち殺してくれ。
「空気も乾燥してますしねー…」
「女みたいな事言うなよ」
俺の隣に立ち、俺と同じように見慣れた街並みをぼんやりと眺めている。
「で?昨日はどうだった?」
「昨日、ですか?」
心臓が高鳴る。
脈拍は乱れてるのに、体も心も凍ったように冷たく感じる。
本当なら、今すぐ耳を塞ぎたい。
「彩花ちゃんにプ、プロポーズするとか言ってただろ?や、夜景の見えるレストランで…」
「あぁ、はい…」
声が上擦る。
これじゃまるで不審者だ。
冷静にならなければと思えば思うほど体が震える。
「オッケー、もらえたのか…?」
聞きたくない…、でも、聞きたい…。
いや、聞かなければいけない。
俺のこの気持ちがぶり返さないように。
もう、ぶり返さないように打ちのめしてくれ。
「彩花は―――――」
もうすぐ始業ベルが鳴る。
業務が始まる。
なのに俺は、一人トイレに籠りながらスマホを睨み付けていた。
業務開始直前のこの時間なら誰かに見られる事も聞かれる事もない。