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昼想夜夢~君、想ふ~
第14章 昼想夜夢
ここは彩花のスマホに電話するか?
いや、俺だとわかれば出ねぇかも知れない。
無謀だが、ここでずっと待ってるか?


仕事を放り出し、会社を飛び出したというのに、俺の頭の中には彩花しかいない。
会社へのフォローを考えなきゃいけねぇのに、そんな余裕すらなくしてる。

ただ、さっきの電話を切るときに聞こえた彩花の声が気になっていた。
今にも消え入りそうな声で、か細い声で囁いた「さよなら」という声が耳から離れない。

それが俺に妙な胸騒ぎを感じさせる。


くそっ、やっぱりここでじっと待ってるなんてとてもじゃないが無理だ。
この辺の不動産屋を虱潰しに調べるか…。

そう思った時だ。






―――「あの、すいません?」
「あ…っ」

彩花の部屋のドアの前で立ち尽くす俺に話しかけてきた一人の男。
声のする方を見ると、そこには60代ぐらいの白髪混じりの男性が立っていた。

「あ、えっと…」

どうやら俺に話しかけてるみたいだが、この男は誰だ?
もしかして、このマンションの住人か?
俺が騒ぎ立てるから不審に思って様子を見に来たのか?

「私、ここの管理人なんですが、香田さんの知り合いですか?」
「あの、僕は…、その…」

この男はこのマンションの管理人のようだ。
きっと俺が騒ぐものだから住人の誰かが通報したのだろう。
何か言い訳をしなくてはとしどろもどろになっていると

「し、知り合いと言うか…」
「ちょうどよかった。香田さんに会ったら伝えといて欲しい事があるんですよ!」
「え?」

俺が彩花の知り合いとわかりホッとした表情を見せた管理人。
いろいろ勘違いしてるようだが、どうやら不審者とは思われていないようだ。

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