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昼想夜夢~君、想ふ~
第15章 君、想ふ
知らないはずはないな。
プロポーズを断ったとは言え彩花と北条は恋人なんだから、知らないはずはない。
俺は心配して追いかけて来ただけだろう。

「好きにしろ…」
「……っ」
「もう、逃げも隠れもしない…」

俺はそのまま北条に背中を向けた。



誰もいない静かな住宅地。
今ここで北条に後ろから鈍器で殴られても、首を絞められても、目撃者はいない。
殺されても文句は言えない。
当然の報いだと思った。
だから、俺は覚悟を決めて北条に背中を向けた。

「…ざけんな…っ!」
「………。」


「ふ、ざけんなああぁぁぁぁぁっ!!」


















これで何度目の引っ越しだろう?
産まれてからこの年まで、思えばいろんな所を転々として来たな。
昔は、ほとんどたらい回しに近い状態だったけど。

引っ越しばっかりだったから、荷物も驚くほどに少ない。
部屋に置いてある荷物も少なかったし。

そんな事を思いながら電車を待つ彩花。
遠くへ…、どこか遠くへ行ってしまおうと思った。
少ない所持金と少ない荷物で、どこまで行けるかはわからないけど、何もかもを忘れるところへ行こうと思っていた。

「はぁ…。まだかな…」

都心から離れた小さな駅。
電車も30分に一本という、かなりのローカル線。
電車を待っているのも彩花だけ。

少ない手荷物だけを持ち、今か今かと電車を待っていた。
こんな古びた駅の時刻表、素直にこのまま信じていいのかと疑いながらベンチに座り電車を待った。


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