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昼想夜夢~君、想ふ~
第15章 君、想ふ
「…………。」



思い返せば、いろいろあったな。
まー君と再会して、付き合い出して、交際期間としては短かったけど、学生時代からの時間も足せばかなり濃密な思い出ばかり。

一つ一つ思い出すと懐かしくて笑いが込み上げて来る。

このまま、まー君だけを好きでいられれば幸せだったのに。
例えどんなに酷いことを言われても、それに目を閉じて、まー君だけを想い続けたかったのに。



再会してしまった。
幼い私を助けてくれた人に。
初恋にも似た思い出、あの優しい日々を与えてくれた人に。
ただ、再会出来ただけでよかった。




「…………」

再会したあの人は、まるで悪魔のように変わり果てていた。
酷いこともたくさんされた。
思い出が崩れた瞬間だった。

でも、本当に酷いのはあの人じゃない。
本当に酷いのは…。





唇を噛み締めながら頬に掠める冷たい風を感じていた。
吹き抜ける風が髪をとかしていく。
彼が切り落としてしまった髪の毛。
この髪を見るたびに、胸が張り裂けそうになる。



本当に酷いのは、あの人じゃない。
本当に酷いのは…。




昼下がりの冷たい風を肌で感じていると、遠くの方から踏み切りの音が聞こえて来た。
もうすぐ電車が到着する。

「あ…」

電車を乗り継いで、どこまで行けるかわからない。
どこへ行けばいいのかすらわからない。
でも今は、たくさんの事が有りすぎたこの街から離れたい。

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