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昼想夜夢~君、想ふ~
第15章 君、想ふ
―――――カンカンカンカン…。
顔を覗かせると、遠くの方に電車が見えた。
ごめんね、まー君。
最後の最後で裏切ってしまった。
本当に酷いのは、あんな最低な男とわかっていながら
最後に手を伸ばした私だ。
手荷物を持ち、電車に乗る準備を整えた。
もうこの街にはいられない。
愛すべき人を裏切ってしまったこの街には。
どこか、出来るだけ遠くへと思っていた。
急いで仕事を辞めて、マンションも解約して、慌てて夜逃げのように荷物を纏めて飛び出した。
どこへ行けばいいかもわからないままだけど。
―――――カンカンカンカン…。
思い出すのは、まー君との日々。
そして、純お兄ちゃんとの―――――
「彩花っ!!」
―――――え…っ?
突然、背後から聞こえた声。
その声にハッとして顔を上げた。
何、今の…?
幻聴?
だって、彼がここにいるはずがない。
今頃は仕事のはずだ。
彼が、ここにいるはずが…。
ゆっくりと振り返ると、そこにいたのは…
「彩花…っ」
「……あ」
頬を真っ赤に腫らし、息を切らしながら走ってきた彼の姿だった。
「純、お兄ちゃ…」