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昼想夜夢~君、想ふ~
第6章 指先
「あ、俺ちょっとトイレ行ってくるわ」
「え?今からですか?もうすぐ部長来ますよ?」
「すぐ戻る」

俺はわくわくした気持ちを抑えきれずに部署を出た。
時間的にもうすぐどこの部署も業務が始まる。
こんな間際の時間にトイレに行ったところで誰もいないだろうし、ゆっくり彩花と話せるな。

俺は歩きながらスーツの内ポケットに手を伸ばした。
すぐにでも彩花に電話をかけられるように。
あの日、再会した居酒屋で、俺と番号交換なんてしたのが間違いだったな。



トイレに行くと、やはりそこには誰もいなかった。
ここにくる廊下でも、誰ともすれ違わなかったぐらいだ。
俺は片手でスマホを弄りながら、あの日に登録した彩花の電話番号を呼び出した。



―――RRRR、RRRR、RRRR…



スマホを耳に当てると、彩花を呼び出しているベルの音。
彩花も今頃仕事中だろうし、今の時間は出れないかもな。
それとも、俺からの着信だとわかったら無視するか…。
ま、俺からの着信があったとわかれば何かしらの連絡は返って来るだろう。
俺にはまだ、彩花を脅迫するためのあの写メがあるのだから。


暫く俺の耳で鳴り続ける呼び出し音。
さすがに仕事中かも知れないし出れねぇかと諦めかけたその時


RRRR、RRRR、RR――――『……はい』





少し不機嫌そうな彩花の声が返って来た。
長い長い呼び出し音の後に彩花は電話を取った。

「あー、随分とご挨拶だな」
『……。』
「せっかくの初めての電話なんだから、もっと可愛い台詞で迎えて欲しかったもんだが?」
『……何か用なの?』

冷たい彩花の声色。
ま、俺のこのジョークも彩花からすれば腹立たしいだろう。
俺からの着信に可愛く反応出来るはずもないか。


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