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第8章 陽子の正式な出勤日

そんなことをあみがふと思っていると
「あみさんホームページを見てのご指名のお客様です。」と男性従業員が呼びに来た。

「お！ネット見て来てくれた人なんだ～。はいはい。すぐ行きますよ！じゃあ稼いできます。」と客の席に向かう。

「いってらっしゃい。あみさんともなるとネット見てのお客さんの来店もあるんですね～。私もあるといいな～。」と陽子は皆に言う。


あみが客の席に向かう途中で「あのお客さん、どっかで見たことある人なんですよね～。俺の勘違いかな～。」と男性従業員が言っている。

「誰かに似てるとか。前に店に来たことある人とかなんじゃないの。まあ上手く接客してくるからさ。」

「じゃあ、お願いしますね。」

そして指名客の席に到着し、「お待たせしました。あみです。」と挨拶をして頭を下げ、顔を上げた瞬間にあみは「え！？」と驚いた。

「あっ！ねーさんお久しぶりです。幸一郎兄さんの後輩の田島です。」

田島は実はあみの過去に愛したお笑い芸人市川幸一郎の可愛がっている後輩芸人で、現在芸人以外にナレーションやイベント司会等幅広く活動しているタレントなのだ。

「田島ちゃん、え、どうしてここに・・・」

「兄さんとねーさんが別れてから、確かに兄さんは売れっ子になりました。今では芸人だけじゃなく俳優もやってるくらいです。でも、兄さんの心の隙間を埋められるのはやっぱりねーさんだけなんです。」

お笑い界では、先輩の芸人の彼女を後輩芸人は、ねーさんと呼ぶのが通常なのだ。

「え、まず、確認するけど・・・どうして私がこの店で働いてるのが分かったの？」

「探しました。結構必死に。」

「だってキャバクラとか都内や他の都市にどれだけあると思ってるの？」

「だから探し続けたんです。何千、何億あろうとも。もしかしたらねーさんが普通の仕事してるかもしれないからそういう会社の従業員一覧とかも。」

「は？え？ゴメン頭が混乱してる。だってうちのホームページの私の写真だって目はぼかしてるから確証は無いでしょ？」

「でも僕は、顔の輪郭と口元でひょっとしたらこの人がねーさんじゃないかって思ったんです。」

「え、あんたネット探偵もびっくりの仕事ぶりだよ。」