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~菊タブー~ お妃候補はドレサージュに陶酔し…
第1章 お妃候補は勝ち気で聡明な国際派御令嬢
「フフフ、良いじゃないか、イクコ。この国で最も高貴な貴族に求婚されている美女を待たせるチャンスなんてそうはないからな」
カオスは一癖ある笑みで、東洋人の美女を見返す。
「ハーバード卒業以来ね、貴方と会うなんて。それも東京で、だなんて。びっくりしちゃった」
カオスと郁子はハーバードで、経済学を学んだ仲だ。一時大人の関係めいたものもあったが、郁子は現在日本に恋人がいる。
「ニッポンに戻ってからも東大からエリート官僚とは君らしいな」
立場には天と地ほども差が開いた二人だが、情の深い日本人女性らしく、郁子は昼間偶然にランチの場で再会した彼と落ち合う約束を交わした。
しばしは郁子の身の上話を聞かせる格好で、同窓の会話が続く。
「ホントに困っちゃう。ただ御所に招かれただけだっていうのに…」
郁子は、マスコミから連日追及を受けている現在の境遇を、少々酔いの回った、それでいて神々しい色香を発散しつつ頭を振る。彼女がどんな可憐な女優より、国民の馬耳を集めている理由。それはこの国の皇族、それも時代の祭祀王になる御方から、熱烈なラブコールを送られているからだ。しかし、郁子のハートは熱くも甘くも動きもしない。国民の多くが敬愛する徳宮秀仁。そんなお方に敬愛の心を抱かぬ郁子が、愛国者でないという批判は当たらない。あまりにも育った感覚が違うのだ。国連大使も噂される父、小越典泰とともに幼少期から世界各国を移り住み、先進国アメリカで最上級の教育を施された国際人の郁子。多分にアメリカナイズ度された感覚を持つ先進的で進歩的、現実主義の彼女にとって、国民の安寧のため祈りを基調とする我が国古来の伝統的な存在は理解しがたいのだ。
カオスは一癖ある笑みで、東洋人の美女を見返す。
「ハーバード卒業以来ね、貴方と会うなんて。それも東京で、だなんて。びっくりしちゃった」
カオスと郁子はハーバードで、経済学を学んだ仲だ。一時大人の関係めいたものもあったが、郁子は現在日本に恋人がいる。
「ニッポンに戻ってからも東大からエリート官僚とは君らしいな」
立場には天と地ほども差が開いた二人だが、情の深い日本人女性らしく、郁子は昼間偶然にランチの場で再会した彼と落ち合う約束を交わした。
しばしは郁子の身の上話を聞かせる格好で、同窓の会話が続く。
「ホントに困っちゃう。ただ御所に招かれただけだっていうのに…」
郁子は、マスコミから連日追及を受けている現在の境遇を、少々酔いの回った、それでいて神々しい色香を発散しつつ頭を振る。彼女がどんな可憐な女優より、国民の馬耳を集めている理由。それはこの国の皇族、それも時代の祭祀王になる御方から、熱烈なラブコールを送られているからだ。しかし、郁子のハートは熱くも甘くも動きもしない。国民の多くが敬愛する徳宮秀仁。そんなお方に敬愛の心を抱かぬ郁子が、愛国者でないという批判は当たらない。あまりにも育った感覚が違うのだ。国連大使も噂される父、小越典泰とともに幼少期から世界各国を移り住み、先進国アメリカで最上級の教育を施された国際人の郁子。多分にアメリカナイズ度された感覚を持つ先進的で進歩的、現実主義の彼女にとって、国民の安寧のため祈りを基調とする我が国古来の伝統的な存在は理解しがたいのだ。