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続・独占欲に捕らわれて
第5章 策士愛に溺れる
「なにかしら、これ」
千聖は説明書を手に取って読んだ。
“しおりには名前を書いて、気に入った本にお使いください。気になった本にしおりが挟んであっても、読んでくれてかまいません。本の相席をお楽しみください”
説明書には上記のことが書いてある。

「へぇ、面白いお店」
紅玲は丁寧に説明書を畳むと、メニュー表を広げた。
「注文してから本選ぼうか」
「えぇ、そうね」
千聖もメニューをのぞき込む。写真付きのメニュー表で千聖の目をひいたのは、“ごろごろいちごのパンケーキ”。分厚いパンケーキに、大きくカットされたいちごがたくさん散りばめられている。かけるものはチョコソース、メイプルシロップ、自家製いちごジャムの3種類から選べるというのも魅力的だ。

「いちごのパンケーキにする? なにをかけるかで迷ってるのかな?」
紅玲は口元に弧を描きながら、パンケーキの写真を指さした。
「よく分かったわね……。それもあるけど、ひとりで食べ切れる気がしないし、さっきアイス食べたからどうしようかと思って」
「それならとりわけ皿もらって一緒に食べようよ。そうすれば糖分も過剰摂取することないだろうし」
「あら、ありがとう。それならかけるものも決めてもらっていい?」
「チョコソース」
即答する紅玲に、千聖は口元をおさえて小さく笑う。

「なんで笑うの?」
「本当に甘いのが好きなんだなって思っただけよ。飲み物はどうする?」
「エスプレッソにしようかな」
「私が注文しておくから、先に本選んでていいわよ」
千聖の言葉に、紅玲は目を輝かせる。

「ありがとう、チサちゃん。さっそく行ってくる」
紅玲は立ち上がると、近くにある本棚の背表紙を指先でなぞる。いきいきとした顔で本を選ぶ紅玲が可愛く見えて、千聖は頬を緩ませる。
「ご注文は決まりましたか?」
店主はおだやかな笑みを浮かべ、千聖に聞いた。

「はい。アールグレイとエスプレッソを。あといちごのパンケーキを、チョコソースでお願いします」
「アールグレイにエスプレッソ、いちごパンケーキをチョコでですね」
店主はオーダーを繰り返しながら、伝票を記入する。
「すいません、あととりわけ皿をもらえますか?」
「はい、かしこまりました。どうぞごゆっくりお楽しみくださいね」
伝票になにかを書き足すと、店主は厨房へ消えた。
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