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続・独占欲に捕らわれて
第5章 策士愛に溺れる
その後男性は女性の墓参りをしたあと、彼岸花畑で服毒自殺を図るも失敗。彼女の墓を管理する寺で目が覚める。悪友と住職と話して女性の真相を知り、誰とも恋をせずに生きていくことを密かに誓う。そんな話だった。
読み終えた千聖は、複雑な気持ちで本を閉じる。
「ふぅ……。あ、チサちゃんも読み終わったの?」
満足げに本を閉じた紅玲は、にこやかに千聖を見る。

「えぇ、読み終わったんだけど後味悪い話だったわ。主人公の男性は恋人がお嬢様だと知った途端一方的に別れて、女性は自殺しちゃうの」
「それは悲しい話だね……。その男性は金持ちが嫌いだったとか?」
千聖は静かに首を振る。

「いいえ、女性の愛が重すぎると思っていたんですって。それに、女性には勝手に決められた婚約者がいたんだけど、その婚約者や義理のお母さんから逃げるにしても、逃げる資金も外国に逃げる度胸もないからって、理由を並べ立ててたわ。ひどい話よ」
「愛だけじゃどうにもならないって話?」
「それもあるんでしょうね、たぶん。最後に男性が美談にまとめて、その女性以外のことは好きにならず、幸せに暮らしていきたい、みたいな終わり方だったのが気に入らないのよ」
千聖の話を聞き終えると、紅玲は腕を組んで唸る。

「本を読んでないからなんとも言えないけど、ほかの女性を好きにならないって言うくらいだから、大きな幸せは手に入らないんじゃないかな? それでも小さな幸せは許してくれってことじゃない?」
「うーん、たぶんそんな話、なのかしら?」
「その本、あとで読んでみるよ」
紅玲はテーブルのすみにあるボールペンでしおりになにか書き込むと、徒花にしおりを挟んだ。

「じゃあ私は、次ここに来た時はその本を読もうかしら」
千聖は“綾瀬”と書くとすぐに塗りつぶし、“鈴宮千聖”と書き直した。
「さっそく苗字書いてくれたんだ、嬉しいな」
紅玲は本を差し出しながら言う。ふたりは自分が読んでいた本を本棚に戻すと、会計を済ませて店を出た。
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