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続・独占欲に捕らわれて
第3章 紅玲の取材旅行
「ねぇ、チサちゃんは明日も仕事なんだし、そろそろ寝よう?」
「えぇ……そうね……」
千聖は寂しさを押し殺して、紅玲の胸に顔を埋めた。紅玲は相変わらずなにも知らないふりをして、電気を消す。
(紅玲は、私と離れて平気なの……?)
不安を抱えたまま、千聖はそっと瞼を下ろした。

翌朝、先に起きた紅玲は朝食と千聖の弁当を作る。彼が動く度、首に下げた鍵束がシャラシャラと音を立てる。
「おはよう、紅玲」
浮かない顔をした千聖が、台所に顔を出す。
「おはよう、チサちゃん。もう少しでできるから待っててね」
紅玲はあえて明るく振る舞い、それが千聖をさらに寂しくさせる。

「楽しみだなぁ、初めての取材旅行。ねぇ、チサちゃんは京都か奈良に行ったことある?」
「中学生の修学旅行で両方行ったけど、あんまり覚えてないわね……。写真、楽しみにしてるわ」
千聖は紅玲の背中を見つめながら、強がりを言う。
「うん、是非とも楽しみにしてて。……さて、完成。おまたせ、チサちゃん」
紅玲は食卓にトーストとベーコンエッグ、サラダ、ヨーグルトを並べていく。最後に紅茶を注いで、紅玲も定位置に座った。

「いただきます」
ふたりは声を揃えて言うと、朝食を食べ始める。
(しばらくは、こうしてふたりで食べられないのよね……。ん? なにかしら、あれ……)
美味しそうにトーストをかじる紅玲を眺め、彼の首に鍵束がかかっていることに気づいた。

「ねぇ、紅玲。首にかかってるその鍵束はなにかしら?」
「ん? あぁ、これチサちゃんに預けておこうと思って」
紅玲は思い出したように言うと、鍵束を千聖に手渡す。1つだけ赤いリボンがついてる鍵がある。
「これは、なんの鍵?」
「全部この家の鍵だよ。ふだん使う部屋は開け放しているけど、この家の部屋のほとんどには、鍵がついているんだ。オレがいない間、好きに家の中を見てていいよ。ただし、その赤いリボンがついた鍵は使っちゃダメ」
紅玲の話を聞きながら、千聖はリボンがついた鍵をつまみ上げる。
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