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続・独占欲に捕らわれて
第3章 紅玲の取材旅行
「シーザーサラダ、シーザーサラダ……あそこね……」
千聖は優奈が指定した居酒屋を特定すると、駅に向かう。優奈は昔から店の名前をほとんど覚えず、特徴で覚える。飲食店なら先程のように印象に残った食べ物を、服屋ならカワイイ系の服と、系統で伝えてくる。
「いい加減店の名前を覚える習慣をつけてほしいものだわ……」
千聖はうんざりしながら呟き、目的の駅で降りる。

予想していた居酒屋に入ると、泣きながらシーザーサラダを食べている優奈をすぐに見つけることが出来た。もしゃもしゃとサラダを食べ続ける優奈を見て、千聖は眉間にシワを寄せる。
ここのシーザーサラダはクルトンの代わりに、砕いたシュガーラスクを使っている。優奈はそれをいたく気に入っているようだが、千聖の口には合わなかった。
「優奈」
「千聖……遅い! カシオレおかわり!」
優奈は通りがかった店員に、カラになったグラスを突きつける。

「は、はい!」
店員は裏返った声で返事をする。
「もう……。すいません、テキーラロックでお願いします。あと、洋酒つまみセットも」
「あ、はい、かしこまりましたぁ!」
店員はそそくさと厨房に入っていった。

「ねぇ聞いてよ! かずくんったら、年上の大人な女性がいいって言うのよ!? 酷いと思わない!?」
優奈はテーブルをドンドン叩きながら訴えかける。
(テキーラだけにしとくんだったわ……)
荒れに荒れる優奈を見ながら、洋酒つまみセットを注文したことを後悔した。

「優奈は甘えたさんだもんね……。そもそもなんで付き合ったのよ?」
「合コンでスイーツの話で盛り上がって、それで……」
顔を覆って嗚咽を上げたため、途中で言葉が途切れてしまった。

「それだけで1年近く続いていた方が、むしろ奇跡ね……」
「そんなこと言わないでよ!」
優奈は叫ぶと、テーブルに突っ伏して大声で泣く。

「す、すいません。テキーラとカシオレと、洋酒つまみセットです……」
店員は気まずそうに注文したものを持ってきた。
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