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続・独占欲に捕らわれて
第3章 紅玲の取材旅行
「おまたせ、ちゃんと乾いたよ」
「ありがとう、助かったわ」
まだあたたかい服を受け取ると、脱衣場で着替える。

「紅茶、きっと優奈でも飲めるくらいには冷めてると思うわ」
脱衣所から出ながら言うと、優奈は恐る恐るカップに口をつけた。
「本当だ、ありがとう」
「どういたしまして。パンはこれでいいかしら?」
千聖は昨日買ったジャムパンを、優奈の前に置く。
「そうそう、これが好きなの」
優奈は嬉しそうに開けて、ジャムパンにかじりつく。

「朝からよくそんな甘いの食べられるわねぇ……」
自分用に買ったくるみパンを開けながら、千聖は呆れ返る。
「甘いのは正義だもん」
「はいはい……」
まともに構っても疲れるだけだと分かっている千聖は、適当に流した。

「ところで紅玲くんとはどうなってんのよ?」
「……人の恋バナで補おうとするのって、どうなの?」
昨晩の後輩達のこともあり、千聖は渋い顔をして言葉を返す。
「だって、人の幸せな話聞いたら幸せにならない?」
優奈は目を輝かせながら、身を乗り出す。

(そうだった……。彼氏絡みだと嫉妬が激しいけど、人の幸せを妬んだりする子じゃなかったわね……)
千聖は紅茶をひと口飲んで小さく笑うと、口を開いた。
「怖いくらい幸せよ。紅玲は惜しみなく愛情表現してくれるし、家事もほとんどしてくれる。……けどね、今離れ離れになってるの……」
「千聖からそんな話が聞ける日が来るなんて、夢にも思わなかったなぁ。で、どうして離れ離れになってるの?」
優奈は不思議そうに千聖の顔をのぞき込む。

「紅玲はシナリオライターもやってるの。それで納期が短いからって理由で、京都と奈良に取材に行っちゃって……」
「あぁ、そういえば自己紹介の時にそんなこと言ってた気がする。そっかぁ……、やっぱり書き物してる人って、そうやって取材に行くんだね」
感心したように言う優奈に、千聖は首を横に振る。
「……優奈は、私の事情を色々知ってるでしょ? 前に兄の借金のせいで、紅玲と契約してたこととか。紅玲が初めて行った県外って、私達の地元なんですって」
「えぇっ!?」
驚きのあまり、優奈は持っていたジャムパンを握り潰してしまった。
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