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続・独占欲に捕らわれて
第3章 紅玲の取材旅行
一方紅玲は、電話が終わるとベッドに横になった。
「そっかぁ、あの家はチサちゃんにとって特別なんだ。前よりも素直になってくれたし、すごく嬉しいんだけど、まだ物足りないんだよねぇ……」
プロット用に使っている小さなノートを開いて、1枚の写真を手に取る。写真には、紅玲が書いた物語を楽しそうに読んでいる千聖が写っている。
「ねぇチサちゃん……。オレだけを見てよ」
紅玲は切ない声で言うと、写真の千聖に口付けた。

千聖は冷凍庫に作り置きをしまい直すと、風呂に入った。
「今までは紅玲がしてくれてたけど、今度からは全部自分でやらないといけないのよね……。それはいいけど……」
そこまで言うと、大きなため息をついて水面を揺らす。
「さっき電話したばかりなのに、もう紅玲が足りない……」
寂しさのあまり、自分を抱きしめる。

「私って、こんなに弱かったっけ……?」
自嘲気味に笑うと、涙が頬に伝う。

風呂を出ると、紅玲が作り置きしてくれた肉じゃがを温める。酒をたくさん呑むために、ごはんはあえて炊かない。
電子レンジが肉じゃがを温め終えたことを知らせると、千聖は缶ビールとナッツを食卓に並べる。 電子レンジから肉じゃがを取り出せば、侘しい食卓の完成だ。

「いただきます」
手を合わせてからじゃがいもを頬張り、昼の疑問が解消した。
「胃袋をつかまれるって、こういうことね……」
納得して頷くと、今度はにんじんを食べた。紅玲が切るにんじんは、少し大きい。じゃがいもと同じくらいのサイズに切ってあるが、味がよく染みている。味付けは薄めで、食材の甘さを引き立てている。

「美味しいわ、とっても……」
消え入りそうな声で呟くと、ビールを一気に飲み干した。そして難しい顔をして缶のふちを指先でなぞると、デコピンの要領ではじき飛ばした。

「ふだん呑めないぶん、今夜はとことん呑むつもりでいたのに……」
紅玲が呑むなと言っているわけではないが、帰宅するとすぐに抱かれ、夕飯と風呂を済ませると、寝室で愛し合ってから眠るというのが、夜の流れだ。
風呂に入る前は危ないからと言われているため、夕飯を食べながら呑めないので、呑む時間がまったくない。
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