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続・独占欲に捕らわれて
第3章 紅玲の取材旅行
ひとり寂しい朝食をさっさと終わらせると、いつもよりはやく出勤する。紅玲がいないこの家には、あまりいたいと思えなかった。
はやく出勤したのはいいがこの日はさんざんで、千聖らしからぬミスが多々あった。

休み時間になると、後輩達が心配して千聖に声をかけに来る。
「大丈夫ですか? 綾瀬先輩……」
「顔色悪いですよ?」
「クマもできてますし……」
(あぁ、私そんな酷い顔してるのね……)
3人に言われ、千聖は自分の目元に触れる。

「実はあまりよく眠れてなくて……。迷惑かけちゃってごめんなさいね……」
「迷惑とは思ってませんけど……、心配です。もし眠れない日が続くようなら、睡眠薬飲んだ方がいいんじゃないですか?」
美幸はスマホで、市販の睡眠薬の写真を見せながら言う。
「そうね、考えておくわ」
千聖は睡眠薬の名前を頭の中で繰り返しながら、そう答えた。

仕事が終わると、千聖はさっそく睡眠薬を買いに、ドラッグストアへ足を運ぶ。美幸に教えてもらった睡眠薬を買って帰ると、スマホを見る。
若手女優が電撃結婚した速報が入っている程度で、紅玲からの連絡は一切ない。

「なんで何も連絡してくれないのよ……」
泣きそうになりながら言うと、スマホをしまって台所へ行く。夕飯用の作り置きをひとつとって温める。夕飯の時間にはまだはやいが、千聖は少しでも紅玲を感じたかった。

「あぁ、そういえば……」
カバンから鍵束を出すと、赤いリボンにそっと触れる。
(この鍵を使えば、紅玲の書斎に入れる……)
電子レンジの音にハッとして、首を横に振る。

「ダメダメ、紅玲に入るなって言われてるんだから……」
自分に言い聞かせると、紅玲の手料理をゆっくり味わった。

食事を終えると、紅玲に“今日は電話をくれないけど、そんなに忙しいの?”とLINEを入れてから、風呂を沸かす。
リビングのソファに寝転び、LINEを開く。
「どうして私を放ったらかしにするの……?」
既読がつかないメッセージを見ながら、静かに涙を流した。
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