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続・独占欲に捕らわれて
第4章 綻び
(嘘も方便とはよく言ったものだわ)
美幸の笑顔を見ながら、千聖は内心苦笑する。
「昨日ミスしたぶん、今日は頑張らなきゃ」
千聖は自分のデスクに座り、仕事を始めた。
この日は休み時間ごとに紅玲が連絡をくれたため、モチベーションを維持しながら仕事ができた。

帰宅するとインスタント珈琲を淹れて、ソファに座る。
「どこまで問い詰められるかしら?」
千聖は小さく息を吐くと、紅玲に電話をかける。
『もしもし、チサちゃん。お仕事お疲れ様』
電話に出た紅玲は、穏やかな声で言う。

「ありがとう、紅玲。ちょっと斗真にかわってもらってもいいかしら?」
『いきなり他の男にかわれだなんて、ひどいんじゃない?』
紅玲は苛立ちを隠さずに、トゲのある口調で言い返す。
「ごめんなさいね、ちょっと確認したいことがあって」
『なにを確認したいの?』
(単刀直入に言っちゃっていいのかしら?)
確信が持てない千聖は、どう返そうかと思考を回す。

「今日斗真っぽい人を見かけたの。すれ違いざまだったから、ハッキリ顔は見えなかったけど」
『もしかしてオレのこと、疑ってるの? 悲しいなぁ、チサちゃんに疑われるなんて』
言葉と矛盾している紅玲の声音に、千聖は頭を抱える。
(あぁ、絶対なにかある……)
「疑ってなんかいないわ。ちょっと気になっただけよ。写真にも写りこんでいなければ、電話でもまったく声を聞いていないんだもの」
『トーマは写真はあんまり好きじゃないし、オレが他の男の写真をチサちゃんに送るわけないでしょ? オレが電話を始めたら黙ってるか少し歩いてくるかしてるんだし、チサちゃんにトーマの声が聞こえなくても当たり前だよ』
ボロを出さない紅玲に、千聖は考え込む。

(うーん……、やっぱりそう簡単に話すわけないわよねぇ……。今朝見かけたのが斗真じゃないにしても、やっぱり今回の取材旅行はおかしいと思うし……)
『もしもーし、チサちゃん? 聞こえてる?』
紅玲に声をかけられ、千聖はハッとする。
「……えぇ、聞こえてるわよ」
『はぁ……あんまり嫉妬させないでよ。オレはチサちゃん以外眼中にないんだから……』
嫉妬してくれたとこを嬉しく思うが、どうにか真実を暴こうと思考を回す。
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