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続・独占欲に捕らわれて
第4章 綻び
「私だって、紅玲以外に眼中に無いわ。だからこそ、斗真に似た人を見かけて気になっちゃったの。……この話はやめましょう。確証はないもの」
『うん、是非ともそうして。そっちはどう? 変わりない?』
紅玲の口調が穏やかなものに変わり、張り詰めていた空気が柔らかくなる。
「えぇ、変わりないわ。今日はこれから、優奈を誘ってどこか呑みに行こうと思ってるの」
追求を諦めた千聖は、純粋に紅玲との会話を楽しむと決めた決めた。

『確か失恋して大変だって言ってなかったっけ?』
「そうよ。だからこそ誘おうと思って。騒いでくれた方が、気は紛れるもの」
『そっかぁ、気をつけて行くんだよ。この前みたいにホテル泊まりにならないようにね』
冗談めかして言う紅玲に、千聖は小さく笑った。

「大丈夫、今回荒れたらカラオケに行くつもりだし、遅い時間になりそうなら先に帰るつもりでいるから」
『ちゃんと帰ってこなくちゃ嫌だよ? 今夜も寝室で通話するんだから』
囁くように言われて昨晩のテレフォンセックスを思い出し、千聖は頬を染める。
「分かってるわ、大丈夫。遅くても11時には家に帰る予定だから」
『それならよかった。それじゃあ、また今夜。愛してるよ』
愛の言葉を最後に、電話は切られた。

千聖は優奈に誘いのLINEを入れると、風呂を沸かしに行く。戻ってLINEを確認すると“これから合コンだから、またあとでね”と返信が来ていた。
「切り替えはやいわね……。立ち直ってくれるならなんでもいいけど」
スマホをしまうと、千聖は夜の街へ足を運んだ。

日本酒をたくさん揃えた居酒屋に入ると、ふたり掛けの席に案内される。この店は様々な地酒を取り扱っており、千聖の地酒も置いてある。
「紬美人と砂肝ください」
席に座るなり、千聖はさっそく注文する。
「紬美人と砂肝ですね」
店員は注文を繰り返すと、厨房へ消えた。

「決定的な証拠がないと、なにも始まらないわよね……」
千聖はぶつぶつと呟きながら、お冷を口に含む。
「千聖さん……?」
聞き覚えのある声に顔を上げると、目を丸くした斗真がそこにいた。
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