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続・独占欲に捕らわれて
第4章 綻び
「斗真!? じゃあ、今朝見かけたのはやっぱり……」
「今朝?」
斗真は怪訝そうに千聖を見つめる。
「ねぇ、一緒に呑みましょうよ。相談したいこともあるし、ここは私が持つから」
「よく分からないけど、そうさせてもらおうか」
斗真は優しく微笑むと、千聖の向かいに座る。ちょうどそのタイミングで紬美人と砂肝が運ばれてきた。

「へぇ、紬美人か……。では僕は一人娘と冷奴、枝豆をください」
興味深そうに紬美人を見てから、斗真はメニュー表も見ずに注文する。
「相変わず冷奴好きね。それにしても、目の前で地酒を頼まれるのはなんだか嬉しいわね」
千聖は目を細めながら、紬美人をひと口呑む。

「なるほど、あそこが君の地元というわけか。ところで、相談したいことって?」
「紅玲が今取材旅行に行ってるんだけど、あなたも同行していることになっているの」
「なんだって?」
斗真は眉間にシワを寄せる。
「その反応からすると、口裏合わせすらしてないのね……。この前いきなり、京都と奈良に取材旅行に行くって言い出して、ろくに県外に出たことないから心配したら、斗真と一緒だから大丈夫だって言ってたの。だけど今朝、あなたに似た人とすれ違って問い詰めたんだけど、ちゃんとした証拠がないから諦めたわ」
「紅玲がそんなことを……」
斗真は難しい顔をして、お冷を一気に飲み干した。

「ここまで不可解な行動をするのは初めてだ……。まぁあいつのことだ、なにか理由があるのだろう」
「どんな理由よ……」
千聖がため息まじりに言うと、斗真は肩をすくめる。
「僕には理解できないよ。旅行に行くって言い出す前に、なにかおかしなことは?」
斗真に言われ、千聖は顎に手を添えて旅行前の日々を振り返る。

「ずっと一緒にいてほしいから、仕事を辞めてほしいって言われてたの。それと、『ずっとそばにいてくれればいいのに』って言われて、仕事があるからって言おうとしたらキスで妨害されて、『仕事があるからずっとは無理って言うのは、拒絶と同じ』、みたいなこと言われたわ……」
「原因は……、恐らくそれだろうな……」
斗真は神妙な顔をして、運ばれてきたばかりの一人娘をひと口呑む。
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