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続・独占欲に捕らわれて
第1章 穏やかな朝
「まぁ……あなたの境遇を考えたら、納得出来なくはないけど……」
「けど?」
紅玲は好奇心で目を輝かせながら、千聖の顔を覗き込む。

「私だったら、そんな状況になったら恋なんてしないわ」
「それはチサちゃんが、最近まで本当の愛を知らなかったからでしょ? ……といっても、オレもその頃は本当の愛なんて知らなかったけどさ。寂しかったんだよ。家族はあんなのだしさ。親友には恵まれたけど、それだけじゃ物足りなかったんだ」
紅玲は千聖を抱き寄せながら言う。

「そう……」
千聖はなんとかそれだけ言うと、紅玲の手を握った。
「部長には感謝しないとね。おかげでこんなに素敵な恋人が出来たんだから」
紅玲は手を握り返しながら、明るい声で言う。
「顔も名前も覚えてないのに、どう感謝するのよ」
千聖は小さく笑いながら、言葉を返す。

「なにも本人に伝えることだけが感謝じゃないからね。さてと、次はチサちゃんの話を聞かせてもらおうかな」
「いいわ、何が聞きたいの?」
千聖は紅茶をひと口飲むと、クッキーをかじった。

「チサちゃんがなんであそこまで、恋愛に興味がなかったのか」
千聖はあぁ、と声を漏らしながら苦笑する。
「私の周りに、まともな……というか、憧れられる恋愛をした人がいなかったからよ。中学生の頃は仲のいい男子と話してただけで、3人組の女子に詰め寄られたし、優奈も凄まじかったから……。正直、恋に恋する時間すらなかったわ」

「詰め寄られたって、なんて?」
「掃除の時間に廊下を掃き掃除してたら3人組に囲まれて、『沢田くんは満里奈ちゃんの好きな人なんだから、取らないでよね』って。普通に雑談してるだけで、そんなんじゃないって言ったらすぐに納得してくれたけど」
今思い出してもおかしくて、千聖は苦笑しながら答える。
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