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続・独占欲に捕らわれて
第5章 策士愛に溺れる
だが翌日に青髭が帰ってきてしまい、誤魔化しもきかずにあの部屋に入ってしまったことがバレてしまう。今日中に命を取るという青髭に頼み込んで、娘はお祈りをするふりをして兄達に助けを求める。青髭は娘が殺される寸前に助けに来た兄達に殺され、今まで殺してきた女達と並べられたという話だ。
読み終えた千聖は、声を出して笑った。

「なに、紅玲はこれを真似たわけ?」
千聖はなんとなくだが、紅玲の考えが分かってしまった。紅玲は千聖にわざと寂しい思いをさせ、この部屋に入らせるのが目的だったに違いない。きっとこの部屋のどこかにカメラが仕掛けてあり、それを証拠に千聖を言いくるめ、仕事を辞めさせようとしたのではないかというのが、千聖の推理だ。

千聖がカメラを探そうと立ち上がると、玄関が開く音がした。
「チサちゃーん? どこにいるの?」
ドタドタと慌ただしい足音と共に、愛しい人が自分の名前を呼んでいるこの瞬間がとても幸福で、千聖は頬を緩める。
「私はこっちよ! 2階にいるわ」
千聖が大声で言うと、階段を駆け登る音が聞こえ、紅玲が勢いよく部屋に入ってきた。

「チサちゃん!」
紅玲は千聖が書斎にいることを咎めようともせずに、彼女を力強く抱きしめる。
「おかえり、紅玲。帰ってくるのが遅いから入っちゃった」
「ただいま、チサちゃん。そんなの、もうどうでもいいよ」
紅玲は今にも泣きそうな顔で言うと、唇を重ねた。千聖は目を閉じて、紅玲のぬくもりを噛み締める。唇が離れて改めて紅玲の顔を見ると、ひとすじの雫が頬を伝う。

「もう、なに泣いてるのよ」
千聖は苦笑しながら、涙を指先で拭う。
「それだけ寂しかったってことだよ……。はぁ、久しぶりのチサちゃんだ……」
紅玲は千聖の首元に頬をすり寄せる。

(なんだか犬みたい……)
千聖は微笑ましく思いながら、白いメッシュが入った髪を撫でる。
「私だって寂しかったわ。こんないい女を嘘ついてまでひとりにして、悪い男ね」
「嘘?」
紅玲はキョトンとした顔で、千聖を見上げる。
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