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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
息を切らしながら階段を駆け上がる。
裏扉を震える手で押し開け、部屋に飛び込んだ。
悴む手で鍵を掛け、奥の寝室に走り込み寝台で自分の身体を守るように抱きしめる。

…見られた…見られてしまった⁈
心臓が破裂しそうに激しく音を立てる。

…大丈夫。
階段下の鍵は内側から掛かっている。
だから上がってくることはない。

…ストールを被っていたから、この金の髪も見られてはいないし、遠目では瞳の色までは分からないだろう。

必死で安心材料を探し出し、自分に言い聞かせる。

…先ほどの男の姿が脳裏によぎる。
遠目で貌や表情までは分からなかったが、まだ若く背が高くて…黒い軍服を着ていた…。

…軍服…て、ことは…軍人…?
再び、心臓が激しく音を立て始める。
世事に疎い瑞葉だが、自分が何から隠れているのかくらいは分かる。
一番見つかってはならない相手が軍人であると言うことも…。

…もし、軍人や特高に…ここに隠れていることを気づかれてしまったら…。
恐怖に胸が張り裂けそうになる。

…寝台の上、蹲りながら裏扉を凝視する。

瑞葉は固唾を飲んだまま、いつまでも動けずにいた。


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