この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
翌日も、普段と変わったことはなかった。
自宅に帰宅していた薫はカイザーとともに現れた。
薫の母から送られてきたという軽井沢の牧場で作られたバタースコッチを瑞葉に手渡しながら、彼は陽気に喋った。
「カイザーが瑞葉さんを恋しがって大変でしたよ。
早く学院に戻りたいって夜になるとすごく悲しそうに鳴くんです」
「…ありがとう、カイザー」
千切れそうに尻尾を振るカイザーをぎゅっと抱きしめる。
…カイザーからはやはり陽だまりの匂いがした。

…少ししたのち、さり気なく尋ねてみる。
「…あの…、薫さん。
学院に誰か訪ねてきたりしていませんか?
…僕のことを探している人とか…」
薫は大きな眼を見開き、きょとんとした表情をした。
「瑞葉さんのことを?
いいえ。そんな人、いませんよ。
紳一郎さんからもそんな話は聞きませんし…」
「…そうですか…」
ほっとしたように長い睫毛を伏せた瑞葉に、薫は励ますように手を握りしめた。
「大丈夫ですよ。
八雲さんが暫く来られないから心配かも知れませんが、瑞葉さんのことは僕たちがお守りします。
…それに、ここを嗅ぎつける人なんて絶対にいませんよ。
まさか、礼拝堂の塔の上にこんな隠し部屋があるなんて、想像もできないはずですからね」

屈託なく薫に言われると、そうかもしれない…との思いが強くなる。

…そうだ。
あの軍人はたまたま見かけた人影に気づいて驚いただけだ。
あんなに遠ければ、僕の髪の色や瞳の色など見えるはずはないし…。
もし、本当に怪しんでいるのなら、とっくにここに踏み込んでいるはずだもの…。

瑞葉は漸く胸を撫で下ろし、薫に話しかけた。
「…お家は楽しかったですか?
何か面白いお話はありますか?」
薫の話はいつも本当に愉快なのだ。

薫は肩を竦め、わざとしかつめらしい貌をしてみせた。
「…面白くはないですけれど、僕の鬼ババの手紙を読みますか?
僕への説教しか書いてないこの手紙!10枚ですよ!今回は新記録です。
読んだら暖炉の焚き付けにしていいですよ」
分厚い手紙を手渡され、瑞葉は思わず吹き出したのだった。

/322ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ