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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
「…まだお貌のお色が蒼い…。
お寒いのではないですか?」
速水は椅子にかかっていたローブを手に取り、瑞葉の肩に優しく羽織らせた。
弾みで男の大きな逞しい手と瑞葉の華奢な白い手が触れ合った。
速水は眉を顰めた。
「…お手がこんなに冷たい…」
言うが早いか、瑞葉の手は男の両手にすっぽりと包み込まれた。

「…あ…っ…」
慌てて引き抜こうとするのに
「何もいたしません。
貴方のお手を温めたいだけです」
男は手を離してはくれなかった。
「…冷え切っていますね…。
可哀想に…」
男の大きく温かな手が瑞葉の両手を揉み込むように握り締める。
熱い吐息をかけられ、速水の凛々しく…且つどこか繊細な貌が近づく。

…端正な眉、涼しげな瞳、形の良い鼻筋、唇はやや大きく男性的だ…。
広い肩幅や厚い胸板はいかにも軍人然としているが、若々しく爽やかな雰囲気が漂うのはなぜだろうか。
軍人というよりは、知的で品のある学生のようにも見える。

見つめていると、速水は眼差しを上げ、少し照れたように微笑んだ。
…一瞬、心臓がことりと不規則な音を立てた。
握り締められている手が、熱く火照る。

そんな自分に狼狽し、瑞葉は思い切って話を切り出した。

「…あの…、和葉に僕のことを頼まれたとはどういう意味なのですか?」

速水はゆっくりと頷き、誠実な声で語り始めた。
「…先日、江田島にいる和葉くんから手紙を受け取りました。
手紙には、こう書かれていました。
兄の瑞葉が屋敷から忽然と消えた。
家族も、屋敷の使用人も誰もその行方を知らない。
箝口令が敷かれたかのように誰も語ろうとはしない。
…けれど、恐らく首謀者は執事の八雲で、彼の仕業に違いない。
兄の安否が心配だ。
どうか、兄の行方を追って欲しい…と。
…私が憲兵隊の本部に所属しているからでしょう。
和葉くんとは成人してから時折、東京の軍本部で会うことがありましたからね」
瑞葉は身を硬くした。

…そうだ…。
忘れていた。
彼は…速水は、憲兵達の将校なのだ。
一番警戒しなくてはならない人間と一緒にいるのだ。




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