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夜明けまでのセレナーデ
第1章 屋根裏部屋の約束
「…勝手に行けばいい。
僕は見送りになんていかないからな」
つんけんした口調のまま、薫は暁人を見ることもせずに、背を向ける。
「…薫…」
困ったような優しい暁人の声が聞こえた。
それでも尚、無視して帆船作りを続ける。
それは学院のOGから貰った舶来品だが、余りに複雑でちっとも進まないのだ。
いつもは…暁人がやってくれていた。
不器用な薫は、自分の手に負えなくなるとさっさと暁人に押し付けていたのだ。

…ちくしょう。
暁人が士官学校に入ってから、番狂わせばかりだ。
それなのに、今度は…。

…西翼の屋根裏部屋…ここは二人が物ごころついてから、ずっと過ごしていた場所だ。
塔の真下にあるこの部屋は、天井は低いが明かり取りの小さな窓もあり、広さはたっぷりある。
納戸の奥深くに仕舞われているような年代物の家具や置物や雑貨を集め出し、二人で思い思いに飾った。
寝台は誰が買ったのか、中国の古い豪族が使うような凝った意匠のものがあったので、それを暁人と二人で修理して設置した。
古びた双眼鏡から庭園や、東翼にいる光たちや客人や…こっそりサボっているメイドや下僕の様子を見るのは、何より楽しかった。

ここには泉以外は決して誰も寄り付かせなかった。
もちろん光もだ。
菫なんかもっての他だ。
「おにいちゃま!すみれもつれてって!」
と泣きながら後を付いてこられたが、その都度ナニーに引き渡し更に泣かれたものだ。
…意地悪で、ではない。
とにかく部屋はゴミに近いガラクタだらけだから…剥製の熊や鹿、鷲や蛇も飾ってある…菫なんかを入れたら速攻で号泣するに違いないからだ。

…礼也は、敬意を表して特別に招待したこともある。
礼也は眼を輝かせ、
「素晴らしい基地だな。男の子の夢の世界だ。
…けれど、お母様には言わないでおこう。
卒倒しかねないからな」
と、ウィンクして笑ってみせた。

二人だけの…二人とカイザーだけの秘密基地とも言うべき場所だ。

…けれど、それも暁人が海軍士官学校に編入してからはもっぱら薫だけの部屋となってしまった。

その部屋に、今日は暁人がいる。
…海軍士官の真っ白な輝くように真新しい軍服を着て…。

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