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夜明けまでのセレナーデ
第1章 屋根裏部屋の約束
…海軍士官の軍服を着た暁人は、驚くほどに大人びて…そして堂々と辺りを払うような気品と風格すら兼ね備えていた。
元々、大紋譲りの端正な貌立ちにすらりとした長身で、馬術やテニス、クリケットで鍛えられた逞しい身体は歳より大人びて見える。
とても薫と同い年の十八には見えない。
暁人を出迎え、外套を預かった年若のメイドが頰を染めるのを、薫は見逃さなかった。

「…いいよ。見送りはいらない。
玄関は寒いから、薫が風邪を引くといけない」
「なんだよ。また子ども扱いして!」
むっとして思わず振り返ってしまう。
思ったよりずっと近い距離に暁人が佇んでいて驚く。
薫と眼が合った暁人が、まるで一瞬にして太陽が射したかのような明るい笑みを浮かべた。
「…やっとこっちを向いてくれた」
薫は大きな瞳を見張り、上質なサージの軍服に包まれた胸板を突き放した。
「馬鹿。ふざけるな」
少しも痛がらず、暁人は寧ろ嬉しそうに距離を詰めてくる。
「ふざけてないさ。
…だって、しばらく会えなくなるから…最後に覚えているのが薫の後ろ姿だなんて寂しいじゃないか」

薫の怒りがまた爆発する。
手に持っていたセメダインを投げつけ、叫ぶ。
「馬鹿!最後なんて言うな!縁起でもない!」
「痛っ…薫?」
どすどすと床を踏み鳴らし、窓辺に近づく。
出窓になった縁にクッションを置き、そこで日がな一日だらだらとカイザーと過ごすのが薫のお気に入りだった。
乱暴に座り込み、クッションに貌を埋める。
「…最後なんて…口が裂けても言うな…!馬鹿!」
クッションを通した声は不明瞭になり、声の震えは誤魔化せたに違いない。
「…薫…」
背中に、温かな手が置かれる。
「…触るな…馬鹿…」
…泣いてるなんて…気づかれたくない…。
「…薫…。
大好きだよ…」
優しい言葉が吐息交じりに近づき、薫の華奢な身体は背中から暁人に抱き込まれた。
「…大嫌いだ…暁人なんて…」
「…薫…」
困ったような…哀しげな声が聞こえ、薫は更に苛立つ。
「僕を置いて行く暁人なんか…大嫌いだよ…!」
「…薫…!」
暁人の手が、薫の髪を優しく弄り…やがて息もできないほどに強く強く抱きしめられた。
…金モールに包まれた飾り鈕が見える…。
なんだか、暁人ではない…別の大人のひとのようだ。
薫は切なくて、そっと眼を閉じた…。




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