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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
…「…私がまた暫く伺えなくても、ご心配なさいませんように」
業務が少し取り込んでおりますので…とやや苦しげな表情で告げた。
そうして、別れ際に瑞葉の額に恭しいキスをする。
…八雲はひとたび寝台を離れると、瑞葉に馴れ馴れしく無遠慮に触れたりしない。
キスは、額か手の甲にしかしない。
この上なく丁重に敬意を表して、瑞葉に接するのだ。
「…八雲…」
「…愛しています。瑞葉様。
私のこの命は、貴方にすべて捧げております」
瑞葉の手を取り、そっとその甲にキスを落とした。
…言葉は冷静だが、その唇は燃えるように熱かった。
「…八雲…、お前…僕のために無理をしていないか?」
「瑞葉様…?」
「…お前が運んでくる食料や必需品…。
世の中は配給品ですら事欠く今、こんな贅沢品がおいそれと手に入る訳がない。
…それくらい世間知らずな僕にでも分かる」
「…瑞葉様…」
深呼吸をし、意を決して尋ねる。
「…八雲…。
お前は僕に…」
…何か秘密にしていることはないか?
そう言いかけて…口を噤む。
…やはり、無理だ…。
真実を知るのが怖い。
…パンドラの箱を開けて…恐ろしい真実を目の当たりにするのが、怖い。
黙り込んだ瑞葉を、八雲はそっと壊れ物を抱くように抱きしめた。
「…私をお信じください。
私は瑞葉様のために、生きているのですから…」
「…八雲…」
言いかけた唇を、男の指が柔らかく抑えた。
「…すべては、瑞葉様のためなのです」
業務が少し取り込んでおりますので…とやや苦しげな表情で告げた。
そうして、別れ際に瑞葉の額に恭しいキスをする。
…八雲はひとたび寝台を離れると、瑞葉に馴れ馴れしく無遠慮に触れたりしない。
キスは、額か手の甲にしかしない。
この上なく丁重に敬意を表して、瑞葉に接するのだ。
「…八雲…」
「…愛しています。瑞葉様。
私のこの命は、貴方にすべて捧げております」
瑞葉の手を取り、そっとその甲にキスを落とした。
…言葉は冷静だが、その唇は燃えるように熱かった。
「…八雲…、お前…僕のために無理をしていないか?」
「瑞葉様…?」
「…お前が運んでくる食料や必需品…。
世の中は配給品ですら事欠く今、こんな贅沢品がおいそれと手に入る訳がない。
…それくらい世間知らずな僕にでも分かる」
「…瑞葉様…」
深呼吸をし、意を決して尋ねる。
「…八雲…。
お前は僕に…」
…何か秘密にしていることはないか?
そう言いかけて…口を噤む。
…やはり、無理だ…。
真実を知るのが怖い。
…パンドラの箱を開けて…恐ろしい真実を目の当たりにするのが、怖い。
黙り込んだ瑞葉を、八雲はそっと壊れ物を抱くように抱きしめた。
「…私をお信じください。
私は瑞葉様のために、生きているのですから…」
「…八雲…」
言いかけた唇を、男の指が柔らかく抑えた。
「…すべては、瑞葉様のためなのです」