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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
…翌日の夜半のことだ。
裏扉が、こつこつと小さな音を立てた。

どきりとするのと同時に、瑞葉はどこか覚悟していたような自分を感じた。

恐る恐る近づき、声をかける。

「…誰…?」
「私です。速水です」

…聞くまでもなかった。
下の裏階段を上がりこの裏扉まで辿り着ける人物は、速水しかいない。

一瞬、迷ったのち、瑞葉は内鍵を外した。

…本当は、開けなくても良かったのだ。
帰れと言えば、速水は無理に押し入ったりしないだろう。
前回、言葉を交わした時の印象しかないが、彼は自分の敵ではないような気がした…。
だから、彼は自分の意に染まぬことは決してしないだろう。
帰れと言い、二度とこの裏扉を開けなければ良いのだ。
そうすれば、彼との関わりは断てる筈だ。

…けれど、瑞葉はそれをしなかった。
その理由は、自分でもよく分からない。

曖昧模糊とした…胸が波打つような感情に突き動かされ、瑞葉は扉を開けたのだ。
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