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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
「…僕は…お前の何…?」
震える声が、その薄くれないの花のような可憐な口唇から漏れる。
「…僕はお前の人形?
意思を持たないただの人形?
お前の意のままに操れる…お前に快楽だけを与えられ、お前に支配されて生きるだけの…淫らな人形なの?」
八雲の形の良い眉が顰められる。
「瑞葉様…?」
「…お前は…僕の父親なのに…僕を抱いた…。
よく考えたら、そんなの愛じゃない…。
本当の愛なんかじゃない…!
…そんな…神をも恐れぬ忌まわしいことをして…身も心もお前に隷属させて、僕を支配しようとしたんだ…!」
生まれて初めて、憎悪の感情を八雲に吐露した。
…お願いだ…否定して…
そんなことは嘘だ、騙してなんかいないと…
この男の口から、聴きたい。
…真実の、愛の言葉を…
…そうしたら…
瞬きもせずに瑞葉を見つめていた瑠璃色の瞳がふっと細められ、その端正な唇から破裂するような無機質な笑い声が零れ落ちた。
奇妙な笑い声は、果てしなく続くかと思われた。
「…何が可笑しいのですか⁈」
苛立たし気に速水が叫んだ。
一頻り笑い終えた八雲は、別人のように冷ややかな眼差しで瑞葉を見下した。
…そうして、男は優雅な語り口で話し始めたのだ…。
妖しくも残酷なお伽話を紐解くかのように…。
「…やはり貴方は、千賀子様の血を引いた子どもだ。
あの愚かで淫らな淫売…。
…千賀子様にはなかなか子どもが授からなかった。
そのことで薫子様に疎まれ、篠宮家で肩身の狭い思いをされていました。
…ある吹雪の夜、千賀子様は私を馬丁の作業小屋に引き込まれ、仰いました。
…このまま子どもを身籠もらず石女では、私は離縁されてしまう。
私はようやく名門貴族、篠宮伯爵夫人となれたのに…!
実家の両親も、私が離縁されたらどれだけ失望することか…。
父は金融業で身を興した成金で…莫大な持参金だけで私は大貴族の篠宮家に嫁ぐことができたのに…。
篠宮の家と親戚関係になり、両親はようやく社交界に顔を出せるようになったのに…。
離縁なんてされる訳にはいかない。
だから、自分を抱いて孕ませてくれと…。
…父親など、誰でも良いのだと…。
絶対に騙して見せるから…と。
…あの女はそう言って…したたかに笑って、私に迫ったのですよ」
震える声が、その薄くれないの花のような可憐な口唇から漏れる。
「…僕はお前の人形?
意思を持たないただの人形?
お前の意のままに操れる…お前に快楽だけを与えられ、お前に支配されて生きるだけの…淫らな人形なの?」
八雲の形の良い眉が顰められる。
「瑞葉様…?」
「…お前は…僕の父親なのに…僕を抱いた…。
よく考えたら、そんなの愛じゃない…。
本当の愛なんかじゃない…!
…そんな…神をも恐れぬ忌まわしいことをして…身も心もお前に隷属させて、僕を支配しようとしたんだ…!」
生まれて初めて、憎悪の感情を八雲に吐露した。
…お願いだ…否定して…
そんなことは嘘だ、騙してなんかいないと…
この男の口から、聴きたい。
…真実の、愛の言葉を…
…そうしたら…
瞬きもせずに瑞葉を見つめていた瑠璃色の瞳がふっと細められ、その端正な唇から破裂するような無機質な笑い声が零れ落ちた。
奇妙な笑い声は、果てしなく続くかと思われた。
「…何が可笑しいのですか⁈」
苛立たし気に速水が叫んだ。
一頻り笑い終えた八雲は、別人のように冷ややかな眼差しで瑞葉を見下した。
…そうして、男は優雅な語り口で話し始めたのだ…。
妖しくも残酷なお伽話を紐解くかのように…。
「…やはり貴方は、千賀子様の血を引いた子どもだ。
あの愚かで淫らな淫売…。
…千賀子様にはなかなか子どもが授からなかった。
そのことで薫子様に疎まれ、篠宮家で肩身の狭い思いをされていました。
…ある吹雪の夜、千賀子様は私を馬丁の作業小屋に引き込まれ、仰いました。
…このまま子どもを身籠もらず石女では、私は離縁されてしまう。
私はようやく名門貴族、篠宮伯爵夫人となれたのに…!
実家の両親も、私が離縁されたらどれだけ失望することか…。
父は金融業で身を興した成金で…莫大な持参金だけで私は大貴族の篠宮家に嫁ぐことができたのに…。
篠宮の家と親戚関係になり、両親はようやく社交界に顔を出せるようになったのに…。
離縁なんてされる訳にはいかない。
だから、自分を抱いて孕ませてくれと…。
…父親など、誰でも良いのだと…。
絶対に騙して見せるから…と。
…あの女はそう言って…したたかに笑って、私に迫ったのですよ」