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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
「嫌…嫌だ!嫌だ!八雲!いや!」
瑞葉が速水の腕の中でもがき、八雲に駆け寄ろうとする。
木の床に紅蓮の炎が激しく広がり始めた。
「瑞葉様を連れて出て行け」
八雲の鋭い声が飛ぶ。
「早く行け!」
「瑞葉さん!こっちに!」
速水が瑞葉を羽交い締めにする。
無理やり引き摺りながら、八雲に叫んだ。
「あんたも早く来るんだ!」
黒い煙は見る見る内に部屋中に満ち、視界も定かではなくなる。
激しく燃える炎に包まれた寝台を背に、八雲は静かに佇んでいた。
「八雲!八雲!」
子どものように泣き叫ぶ瑞葉に、八雲は昔のように穏やかに微笑んだ。
…幼い頃、夜泣きした時に抱き上げてくれたように…。
…「…瑞葉様。何も怖くはありませんよ。
どうぞご安心ください」
そう言っていつまでも瑞葉を優しく揺さぶり、寝かしつけてくれた…。
あの優しさも、偽りだったのだろうか…。
「八雲!いや…!死んではいや!」
燃え盛る炎と黒煙で、視界が遮られる。
もはや、八雲の姿も霞んで見える。
息苦しさに、激しく咳込む。
速水が暴れる瑞葉を肩に背負い、足早に走り出す。
「八雲!いやだ!」
白い手を、必死に伸ばす。
美しい瑠璃色の瞳が、瞬きもせずに瑞葉を見つめていた。
「…瑞葉様。…私は貴方を…」
…八雲の唇が、声なく…ある言葉を形取った。
瑞葉のエメラルドの瞳が、釘付けになる。
「…八雲…!」
激しい炎が熱い煙とともに部屋の外に溢れ出る。
速水は瑞葉を担いだまま、素早く急勾配な螺旋階段を駆け下りた。
黒煙と炎が恐ろしい速さで追いかけて来る。
「八雲!八雲!」
瑞葉の慟哭が、石造りの螺旋階段の天井に響き渡った。
瑞葉が速水の腕の中でもがき、八雲に駆け寄ろうとする。
木の床に紅蓮の炎が激しく広がり始めた。
「瑞葉様を連れて出て行け」
八雲の鋭い声が飛ぶ。
「早く行け!」
「瑞葉さん!こっちに!」
速水が瑞葉を羽交い締めにする。
無理やり引き摺りながら、八雲に叫んだ。
「あんたも早く来るんだ!」
黒い煙は見る見る内に部屋中に満ち、視界も定かではなくなる。
激しく燃える炎に包まれた寝台を背に、八雲は静かに佇んでいた。
「八雲!八雲!」
子どものように泣き叫ぶ瑞葉に、八雲は昔のように穏やかに微笑んだ。
…幼い頃、夜泣きした時に抱き上げてくれたように…。
…「…瑞葉様。何も怖くはありませんよ。
どうぞご安心ください」
そう言っていつまでも瑞葉を優しく揺さぶり、寝かしつけてくれた…。
あの優しさも、偽りだったのだろうか…。
「八雲!いや…!死んではいや!」
燃え盛る炎と黒煙で、視界が遮られる。
もはや、八雲の姿も霞んで見える。
息苦しさに、激しく咳込む。
速水が暴れる瑞葉を肩に背負い、足早に走り出す。
「八雲!いやだ!」
白い手を、必死に伸ばす。
美しい瑠璃色の瞳が、瞬きもせずに瑞葉を見つめていた。
「…瑞葉様。…私は貴方を…」
…八雲の唇が、声なく…ある言葉を形取った。
瑞葉のエメラルドの瞳が、釘付けになる。
「…八雲…!」
激しい炎が熱い煙とともに部屋の外に溢れ出る。
速水は瑞葉を担いだまま、素早く急勾配な螺旋階段を駆け下りた。
黒煙と炎が恐ろしい速さで追いかけて来る。
「八雲!八雲!」
瑞葉の慟哭が、石造りの螺旋階段の天井に響き渡った。