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夜明けまでのセレナーデ
第6章 Le Fantôme de l'Opéra
住まいは六区にあるリュクサンブール公園そばのギマール建築の洋館を、速水のフランス人の友人が斡旋してくれた。
元々はかれの友人のジュリアン・ド・ロッシュフォール公爵の持ち家だったそうだが、新しい家に移るために借り手を探していたらしい。
母親が日本人だと言うジュリアンは大変な親日家らしく、二人が家を探していると聞いたら二つ返事で貸してくれたのだ。
…また、二人が恋人同士であることにも、理解を示してくれたのは自由恋愛のパリの土地柄もあるだろうが、ジュリアンのおおらかな人柄によるものらしかった。
速水の友人の引き合わせで会った時、ジュリアンは瑞葉の美貌を見るなり無邪気に眼を輝かせた。
そうして、握手ではなく恭しく瑞葉の手の甲にキスをし、
「…もう少し早く貴方に出会いたかった…。
ムッシュ・ハヤミより先に…ね」
と、艶っぽい目配せをして速水をやきもきさせた。
「…髪を切ってもこれだからな…。
瑞葉、気をつけて。
ロッシュフォール公爵は手が早そうだ」
瑞葉は吹き出した。
「まさか!
…公爵は女性がお好きだと思うよ。
単に社交的なお方なんだろう」
瑞葉の勘は当たった。
ジュリアンは同性愛者ではなかった。
…人目を際立たせる華やかな容姿…常に人の中心にいるような陽気な人気者であり、茶目っ気のある実にチャーミングな人物であった。
かつて日本に数年住んだことがあるジュリアンは、日本語も巧みであった。
また、彼の明るく親切な性格は、初めての異国で新しい生活を始めたばかりの二人にとって、次第に心の拠り所になっていったのだった。
元々はかれの友人のジュリアン・ド・ロッシュフォール公爵の持ち家だったそうだが、新しい家に移るために借り手を探していたらしい。
母親が日本人だと言うジュリアンは大変な親日家らしく、二人が家を探していると聞いたら二つ返事で貸してくれたのだ。
…また、二人が恋人同士であることにも、理解を示してくれたのは自由恋愛のパリの土地柄もあるだろうが、ジュリアンのおおらかな人柄によるものらしかった。
速水の友人の引き合わせで会った時、ジュリアンは瑞葉の美貌を見るなり無邪気に眼を輝かせた。
そうして、握手ではなく恭しく瑞葉の手の甲にキスをし、
「…もう少し早く貴方に出会いたかった…。
ムッシュ・ハヤミより先に…ね」
と、艶っぽい目配せをして速水をやきもきさせた。
「…髪を切ってもこれだからな…。
瑞葉、気をつけて。
ロッシュフォール公爵は手が早そうだ」
瑞葉は吹き出した。
「まさか!
…公爵は女性がお好きだと思うよ。
単に社交的なお方なんだろう」
瑞葉の勘は当たった。
ジュリアンは同性愛者ではなかった。
…人目を際立たせる華やかな容姿…常に人の中心にいるような陽気な人気者であり、茶目っ気のある実にチャーミングな人物であった。
かつて日本に数年住んだことがあるジュリアンは、日本語も巧みであった。
また、彼の明るく親切な性格は、初めての異国で新しい生活を始めたばかりの二人にとって、次第に心の拠り所になっていったのだった。